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殺人鬼デイの人間カルテ~花屋編~

※読む上で必要な前知識。斬った物を水に換える化け物のお話です。彼女は正義の味方ではありません。



12月、デイの堕胎医院が存在するビル、その一階の花屋にて。

-Ⅰ-


「やぁデイ、今日の分の水はもってきてくれた?」

「《ヴァイネヤード》、あなたよくこんな奇形植物に囲まれて生活できるわね。
人間大のカビ胞子だの悲鳴をあげる食虫花だの…気が狂いそう」

「へへー、すごいでしょ~!
ここは文字通り植物園(ヴァイネヤード)。
絶望のエデン。僕の王国だからねっ」

「まったく、人間ってわからないわ…
あなたみたいなのを狂科学者っていうのかしら」

「へへっ、そんなことよりまた話をしてよ。
ここの植物たちは君の悪趣味極まりない話が好きなんだ」

「そう、じゃああの話をしましょうか。
9月のとある金曜日、私の医院を訪れた恋する彼女の話を…」


-Ⅱ-


「えへへ、わたしとうとう運命のヒトに出逢うことが出来たんです!」

「へぇ…運命のヒトねぇ…馴れ初めを聞いてもいいかしら」

「遊園地でぐうぜん同じベンチに座ったのが最初でした。
わたしは乗り物に酔っちゃって、つらくてずっと俯いてたら彼が黙って肩を貸してくれて…
そのとき何となく『あ…この人だ』って思いました」

「あらら、その程度で運命とか言っちゃうの」

「えー、ゼッタイに運命のひとですよー!
だって彼すっごく優しいんですよ
それに格好いいし、真面目だし、まつげ長いし…えへへ」

「わかったわかった、もういいわ。それで用件は何なの?」

「頭もいいし、料理もうまいし…
あ、わたし今赤ちゃんがいるんですけど彼子供好きだからすごく喜んでくれてー」

「だからもういいってばー!」

「で、その赤ちゃんが前カレの子なわけです」

「……」

「何回計算してもそうなんです…えぐっ、ひっく…ど、どうしよう~」

「なるほどね…」

「いまはまだ気付かれてないけど、これがバレちゃったら私たちおしまいなんです!
勘違いでも想像妊娠でも何でもいいから、無かった事にするしかないの!


だからお願いですデイさん、この子を──堕ろしてください!」


-Ⅲ-


「で、堕ろしたの?」

「ウチのルールでね。一度目だけはどんな理由であれ堕胎を受け付けてあげるのよ」

「えぇー何か納得いかないなぁ!せめて前の彼氏サンにも正直に相談してから決めなきゃー」

「まぁね。わたしもそう思った。
でも彼女が彼氏のことを本当に好きで、嫌われたくないって気持ちも
伝わってきたのよ。

彼女はズルくて不誠実だけど。
その気持ちだけは真実に見えたの。」

「ふうん…で、その娘はどうなったの?そのままハッピーエンド?」

「いいえ。彼女は三ヶ月後ふたたびウチに来たわ」

「わくわく」

「新しい彼氏を連れて、ね」

「……えぇえええ?ちょっと待って・・・えっ、アリなの?それ」

「気持ちはわかるけどすごい引きっぷりねぇ…」

「だって、予想外に外道だよその娘!赤ちゃんまで堕ろしといてそんな・・・・・・
運命の彼氏はどうなったのさ!」

「あのヒトとのことは勘違いだったって言ってたわよ。
よく見たらそんなに格好よくなかったって。
よく考えたらそんなに優しくなかったって。
頭わるかったって。料理ヘタだったって。
真面目じゃなかったって。子供好きじゃなかったって。
むしろ自分にひどいことをした、暴力ふるったって」

「……えー」

「つまり、彼女は結局そういうヒトだったのね。
好きなうちは運命の恋人だって勝手に盛り上がって。
嫌いになったら最低の男だ、自分に冷たいと言って。
そうして次々に男を渡り歩いていたの」

「うわぁ…最低だぁ…」

「極めつけはふたたび現れた彼女の台詞。


“こんどこそ運命のヒトが見つかったから大丈夫。”

“でも前カレの子供が邪魔だから堕ろしてくれ。”


三ヶ月前にこの医院を訪れた時とまったく同じ言葉を吐いたの。
あの時と変わらぬ、恋する乙女の表情でね」


-Ⅳ-


(回想)

「…という訳なんですぅデイさん!またあのときみたいに助けてくださいよぅ」

「二度目はないわ。死になさい」

「えっ?今なんt」

(描写不能。回想終了)


-Ⅴ-


「これで彼女の話はおしまい。
楽しかったかしら?《ヴァイネヤード》」

「うんっ、最悪すぎて吐き気がしたよデイ。
植物たちも喜んでるみたいだ」

「そう…よかった。
あ、そうそう忘れるところだった。
これは今日の分の水。植物たちにあげるといいわ」

「ああ、ありがとう、いつも助かるよ!
これは植物にとってすごく良い養分になるんだよ……ん?」

「あら、どうしたの」

「いや、たしかこの話の始まりって三ヶ月前だよね」

「ええ」

「彼女が再び訪れたのって三ヶ月後?」

「そう」

「つまり、今日?」

「ぴんぽん」

「この水…も、も、もしかしてっ……」

デイはにこりと笑った。

「それはいわぬが花、ってものよ」



殺人鬼デイの人間カルテ~花屋編~
――おしまい

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