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野々村友紀子『パパになった旦那よ、ママの本音を聞け!』

30台独身男性(結婚する気配なし)の楽音寺にとって、まったく異世界ファンタジーであるジャンルの本。
しかし、だからこそ見識を広めるために必要であろうと思って、実はこの手の本は結構好んで読んでいる。
まぁ、誰かの面倒を見るという意味で、仕事や私生活にも多少は関係してくるしね。


感想。

最初は「面白おかしく大袈裟にした男性への愚痴」ばかりの本なのかなというイメージがあったが、
読んでみると非常に切実で、どの意見も正当性があると思った。
というより世間の父親ってこんな程度の協力や気遣いもしてないの?と驚愕してしまった。

(特に赤子の)育児というのは年単位のスパンで続く超ハードな繁忙期なのだけど、
父親にその当事者意識がなく、かすかな「手伝い」で満足してるケースが多いようだ。

なんとも前時代的。核家族化が進む現代の育児ではただでさえマンパワーの確保が難しいのに……。


楽音寺は介護を生業としているが、世間の声を聴くと「オムツ替えなんて自分にはできない」という意見が目立つ。

育児でもそこは同じようで、イクメンを自称する父親でも子供が“大”を漏らしていると分かると
母親にパスする人が多いらしい。「うんちバトンタッチ」と名前まで付いている!w

こういうのはやらないから出来ないだけだ。
誰だって「やらなきゃ死ぬ」状況になればやるのだから、技術的な問題ではない。

母親だから生得的に出来ているのではなく、
父親だから生理的に無理なわけではなく、いつまでも慣れようとしないから、いつまで経っても慣れないのだ!
まったくもう、我が子の尻も拭けんのか!フガー!(怒り過ぎ)

読み進めるほどに共感し、同情し、憤慨し、そして最後のまとめ方の上手さに感心させられた。
なかなか良い本だった。情報量も軽めで読みやすい。おススメです。
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[ 2019/09/04 17:37 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

小林よしのり『ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論』

著者の本は(手元にある巻は中途半端で少ないが)折に触れて何度か読み返している。
情報量が非常に過密で、なかなか全て理解できないが面白い。

やや過激な論調が目立ち同意できない部分もある。
しかし概ね、楽音寺の思想は氏の影響によるところが大きいと思う。


今作は楽音寺の地元、沖縄についての作品。ざっくり纏めると以下の通り。
・沖縄はDNAの起源も文化の発祥の地も“日本”が大本である。
(港川原人の骨の分析、歴史的経緯、ウチナーグチの言語学的特徴など)

・かつては中国と日本に朝貢(ちょうせき:主従間貿易)をして、後にアメリカに占領されたせいで
沖縄人のアイデンティティは揺らいでいるが、自信をもって日本人だと名乗れば良い。

・過去の沖縄人の本土復帰にかける情熱は凄かった。
コザ暴動、“甲子園の土”事件など。

・祖国復帰の悲願に尽力した人々を紹介。
『ウルトラマン』の脚本家 金城哲夫、戦後の政治家 瀬長亀次郎など。

・戦後の米軍統治の功罪について。米軍が成したインフラ整備も結局は日本が全額補償した。
土地の接収、基地問題、米兵の犯罪、政治家の傀儡化、その他もろもろ、結局は植民地として蔑視。
「アメリカは良いこともした」という親米派は間違っている。

・沖縄の神話や民俗学を調査。ノロ、ユタ、久高島の儀式、アマミキヨとは何者か。
(↑楽音寺の理解できた範囲ではこんな感じ)

色んな要素があって一読では読み切れない。
(というか既に5回以上読んでるがまだ覚えられない)

結局 印象に残ってるのは、うまそうな食事シーンと、沖縄大学の宮城能彦教授が出てるシーンだった。

実は楽音寺も在学中に講義をとった事があるのですw
宮城先生お元気ですかー。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2019/08/25 21:13 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

2019/8/25 久々の読書記録

阿刀田 高 『短編小説を読もう』

川端昌子・渕上匠子 『おいしさの表現辞典』

野々村友紀子 『パパになった旦那よ、ママの本音を聞け!』

大森望 『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』
(東浩紀、長谷敏司、冲方丁、藤井太洋、宮内悠介、法月綸太郎、新井素子、円城塔、小川一水、山田正紀)

高山一恵・佐佐木由美子 『35歳までにはぜったい知っておきたいお金のきほん』

中沢啓治 『オキナワ』

一条ゆかり 『有閑倶楽部』文庫版1巻


久しぶりの図書館。もうすぐ仕事にも復帰するし、家には積読の本がいっぱいあるから
読む余裕は無いかもしれないんだけど……やっぱり図書館通いはワクワクしちゃって、いつもたくさん借りてしまう。

まぁ、本は触れるだけでも良いものだ。返却日は9月8日。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2019/08/25 15:55 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

渡辺淳一『鈍感力』

昔のベストセラーをいまさら読んでみたシリーズ。

作者は整形外科医かつ小説家・エッセイストとしてもヒットを連発した偉い先生。
映画にもなった『失楽園』という不倫文学は大ブームになり巷を騒がせた。

楽音寺は当時中学生だったけどちゃんと記憶にありますね。
作者自身のスキャンダルも何かと話題になってたし……w


で、本の感想。

「作者の人格がイヤ」。すっごく身も蓋もない言い方だけどそれに尽きる。


内容としては「繊細でナイーブな奴は生き残れない。鈍感力を身に着けろ!」という話なのだが、
作者の論調が説教好きの上司そのもの。

会社で働くサラリーマンには「ストレスに負けるな」とか「鬱になるな」、
恋愛中の男女には「相手の短所に目をつぶれ」とか「別れるな」。

作者自身が身も蓋もなく「それが出来たら苦労しないよ」という指示をしてくる本なのである。

なんかこう……全打席“ホームラン”のサインを出してくる野球の監督、みたいな……。
それが出来たら苦労しないよ!w



昔の人だからしょうがないけど、言い回しや論調が古く、現代のSNSで呟いたら炎上しそうな
ことをバンバン主張してくる所もイヤ。

育児をしている主婦や出産を例に出して「女は痛みに強い=鈍感」とか、
「育児中は恥じらいもなく胸を出して授乳する=鈍感」とか「汚いおむつを替えられる=鈍感」とか。

(あーこの人、育児にまったく関わらない昭和の父親像そのものだなー)
(渡辺淳一、赤ん坊のおむつ替えたことねぇんだろうなー)

と容易に想像させられ、読み進めるたびにゲンナリしてしまったw



全体的に物凄く安易な「女性は強い」「男はダメ」「若者いいこ」「我々オジサンは頭が固い」みたいな
読者に迎合した文章で書いているんだけど、いちいち作者本人の旧態依然とした感覚が見え隠れして、
まっっっっっっっっっっっっったく好きになれなかった。


まぁ、だから、つまり……「作者の人格がイヤ」ということです。はい。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2019/07/15 19:35 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

垣谷美雨『老後の資金がありません』

定年間近の夫婦を主人公にして生活のアレコレを描いた小説。面白かった!

共働きで貯めた貯金1200万が娘の結婚式で500万飛んで、舅の葬式+墓で400万飛んで、残り300万。
年金まであと8年、夫婦ふたりがどうやって暮らしていけば良いのか……という超具体的な悩みが生々しくて良い。

最悪のタイミングで夫婦がどちらも職を失ったり、結婚した娘がDV(家庭内暴力)を受けてる疑惑がでたり、
姑の介護を義妹と押し付け合ったりと、昼ドラみたいなドロドロが押し寄せてくるのだ。怖い!w

ハードな内容にしては文体は優しくて女性的。季節感や生活描写の情緒があって読み味が良い。
そのギャップが新鮮味のあるエンターテイメントになってて面白かった。著者は実力派ですね。


ただ”悪い意味でのフェミニズム”的な部分があるのが気になった。

夫の経済的貢献を無視して「ウチはまるで母子家庭」「妻は打ち出の小槌じゃないのよ」とか言うし、

「夫の会社が年金基金から脱退した時、女性社員はみんな積立金を将来受け取りにしたが、
既婚の男性社員はみんな妻に内緒で一時金を受け取って飲み食いに浪費した」という一節が出てくる。
あり得るのか、そんなこと……?

おまけに、娘の被DV疑惑が実は娘→旦那へのDVだったと判明した際に
「なーんだそうだったのw じゃあ問題ないねーめでたしめでたし」という雰囲気でエピソードが締めくくられる。
いや犯罪だよ!? それはそれで大問題だよ!?


……というように、価値観やモラルの面で同意できない言動も多くある。
(登場人物みんなで年金詐欺に関わって報酬だのマージンだのを取る描写もあるし……)
総評としては「底意地の悪い女性が繊細な筆致で描いた面白い小説」といった所でしょうか。はい。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2019/01/11 17:10 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

舞城王太郎『熊の場所』

・熊の場所

小学生の主人公が、心に闇を抱えた少年と友達になる話。

犬猫を殺して尻尾をあつめる癖がある「まー君」の闇を垣間見て主人公は恐怖を抱くが、
「恐怖を克服するためにはその対象から逃げず、対峙しなければならない」という父親の教えを実践するため、
まー君の家を訪ねて友達になる。

二人はサッカーを通じて仲良くなり、距離が縮まるにつれて主人公はまー君の殺害対象になる。
泊りにいった夜中にこっそり髪や首筋を撫でてくる友達 兼 殺猫鬼。主人公は恐怖をスリルに替えて楽しむ。

同時に、街では小学生男子の行方不明事件が発生。
まー君への疑いを深める主人公だが、恐怖の根源から逃げないため、向かい合うために、調査に乗り出す。
ところが事件は意外な方向へ……。

という話。
少年期の友情+異常者のコンビ物+不思議な事件という構成要素が乙一っぽかった。
最後をもっと後味良く爽やかにしたらよりそれっぽくなりそうだw なかなか面白かった。

ふーむ、しかし楽音寺も最近「友達の心の闇を覗く物語」を作ろうと試みたんだけど、
プロはやっぱ違うな、凄いなーと思った。尖りすぎ。ここまでインパクト出せない。


・バット男

度胸もないのにバットを振り回して結果みんなからいじめられてる近所の浮浪者の話。
高校生の主人公は傍観者で作中は特になにもしない。物語は主人公の友達カップルの愛憎劇が主だ。

バスケに熱中する優秀な彼と、振り向いてほしい愛情不足の彼女。
需要と供給のバランスが崩れた愛情故に、彼女は手あたり次第に浮気する。バット男とさえも寝る。

(バット男は近所の浮浪者で、いつも人に暴言を吐いたりバットを振り回したりするが実際にはとても弱く、
その地区の不良に的にかけられて日常的に虐げられている汚いおっさん。
毎日ひたすら虐められているその姿はもはや社会に組み込まれた歯車で、ストレスのゴミ箱。
バット男はある日突然いなくなり、死亡説も流れ一部のネット掲示板を騒がせたがすぐに忘れ去られた)

父親不詳の赤子が生まれ、彼は愛情を示すために彼女を許し結婚する。学校を辞めてスポーツ雑誌の記者になる。
しかしそれでも足りない。とにかくひたすら不足している。
部活も仕事も赤子でさえも嫉妬の対象で、とにかくひたすらこっちを向いて欲しいと彼女は言う。

不協和が悲劇を生み、彼女が赤子を虐待し始める。赤子を連れて失踪する。
彼は行方を探すため主人公に相談しにいくが、彼女の部屋の遺留物(血で錆びたバット)を見た主人公は
なにか暗いストーリーを想像し、関わり合いになることを恐れ、冷酷に追い返してしまう。

感染するように広がりゆく不幸から逃れるためには抵抗する意思を示さなくてはならない。
戦わないかぎり弱い者へ弱い者へと不幸が押し付けられてゆく。
自分は不幸の最終地点に……「バット男」になるのは嫌だ!

……という話。
はっきりした起承転結とかドラマツルギーがあるわけじゃないけどメッセージ性は強い。舞城らしい。
ブルーハーツの「弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者を叩く」という歌詞を思い出した。



・ピコーン!

頭の回転が早い元ヤン女子が彼氏を殺した犯人を探し出す話。
今作の3つの短編のなかでこれが一番好き。すごくテンポよく進む推理が面白く、物語は切ない。
以前にもレビューした気がするけど(コミカライズ版も読んだし)まぁいいか。もっかい感想書こう。

スペイン・オムレツの作り方から話がはじまる。ジャガイモと赤いハムと玉ねぎと紫蘇を混ぜてレンジでチンして
卵を4個くらいガーッと混ぜてまたレンチン。最後にクレソンを添える。

『クレソンはわたしのアイデア。クレソン以前の哲也はきゅうりだのレタスだのほうれん草のソテーだの
適当な緑モノで色合いを整えてもらっていたみたいだけど(わたし以外のいろんな女に)、
やはり「スペインオムレツ」にはクレッソーンだと思う。クレッソワーントなのでございます。』
(本文146頁)

あんまり意味はない下りだけど、主人公のうきうきした生活振りが伺えてとても可愛い描写なのだw


主人公と彼氏は暴走族を抜けてバイトを始めたり大検を受けたり、前向きに人生を切り拓いていくことを決めたカップルで、
……その……ちょっと下品な言葉なんだけど……「フェラチオ一万本ノック」とやらを敢行している。

まぁ、すぐに他人と喧嘩して体を傷つけて仕事を投げ出してしまう凶暴な彼氏を宥めすかして安定化させるために、
三大欲求のひとつを充実させんとする試み、な訳である。波乱万丈な生活のなかでその試みは日々達成されゆき、
カレンダーに『祝!○○本到達!』などと記される微笑ましい(?)彼らの日常描写は、しかし突然終わりを告げる。

彼氏の変死体が異常な状態で発見されることによって。

寺の境内で胡坐を組み、印をむすんだ片手をあげている。頭部には木の枝が2本刺さっている。
体には数語のアルファベットの血文字。股間はむき出しで紙製の“こより”が巻きついている。

そして……なぜか死体の表情は微笑んでいる。


ショックを受けた彼女が壊れそうになるほど激しく悲しむ場面、そしてその感情を行動力へ変えて捜査に乗り出す場面は
とても熱く、ぐいぐい読ませる力を持っている。主人公の猛スピード推理を『ピコーン!』という擬音で表現して
非常にテンポよく物語を転がしていく様は舞城王太郎作品でしか味わえない唯一無二の読み味だろう。

主人公が犯人の家に突入する直前の緊張感や、犯人の意外な姿も特筆すべき部分ではあるが、
なんといっても最後の『ピコーン!』が秀逸。

ただの生活描写だと思っていた「フェラチオ一万本ノック」やら「ダウンタウンの一人ごっつのDVD」が、
優しい愛情というテーマを鮮やかに物語る伏線だった、と知るとき、あなたもこの作品が好きになっているはずである。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/12/08 20:20 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

2018 10 25の読書記録

細川貂々『ツレはパパ1年生』
      『ツレはパパ2年生』
      『ツレと私の「たいへんだ!」育児』
      『ツレと私の「たいへんだ!」育児2』

著:安部 結貴 漫画:大葉 リビ『わたしは働く うつ ウーマン』
おぐらなおみ『働きママン2年生  2人めまでもがやってきた!』

森博嗣『スカイ・クロラ』

↓また借りた
小泉武夫『くさい食べ物大全』
ミヒャエル・エンデ『鏡の中の鏡』 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/11/12 19:43 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

西尾維新『掟上今日子の備忘録』

西尾維新の一般むけミステリ。新垣結衣主演でドラマ化もされましたね。

一日しか記憶が持たない探偵の話。肉体の表面にメモを残すのは映画『メメント』のオマージュかな。
よくある設定だしトリックも大概チープだけどそこは流石の西尾維新、なかなか読ませる短編集になっています。

この手の話に必ずある「誰かがメモを操作して記憶を改竄しようとする」ネタを、
敵ではなく探偵の味方(主人公)にやらせるあたりが上手い。
エロティックな状況もあいまって非常にドキドキする名場面になっていた。オチも大人っぽくて良い。

西尾維新は物語の縦糸・横糸をつむぐのが上手い印象がある。
今作でも各事件の解決(横糸)を語りながら、探偵・掟上今日子の謎(縦糸)を追う形にしてある。

自身の寝室の天井には、黒いペンキで太々と荒々しく、彼女の字ではない何者かの手跡で
「お前は今日から、掟上今日子。探偵として生きていく。」
と書かれており、朝ベッドから目が覚めた彼女の目に最初に入るようになっている。
今日子はこの字に従って探偵を続けているため、この字を書いた者を探している。

(wikiより)

こういった謎で読者を牽引していく腕力が凄まじい。短編・長編を問わずひたすら書き続けた彼の職人芸と言えよう。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/10/19 17:29 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

森博嗣『探偵伯爵と僕』

すべての漢字にフリガナがふってある児童文学ミステリ。面白かった!

主人公の“少年”が夏休みの課題のために日記を書く、という体で物語は始まり、
ブランコに乗った黒ずくめの奇人“探偵伯爵”と共にこの街の子供の行方不明事件を追う……という内容。

最初はノスタルジックな田舎町の日常モノだが、祭りの夜に友達が消え、それから徐々に
身の回りがきな臭くなっていき、ついに犯人の魔の手が主人公にも伸びていく、という感じが良い。
ミステリの醍醐味を感じた。ゾクゾクする。

ひねくれた推理物も良いけど、こういう初級編って感じの正統派な児童文学も好きだ……。

オチのちょっとしたトリックは森博嗣ファンの楽音寺にはすぐに分かった。
主人公の本名がこういう感じってことは、きっとこうするだろうな、と……w
全体の印象がガラリと変わる、ミステリらしい読後感のあるオチ。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/10/19 17:07 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

2018 10 11の読書記録

梁石日(ヤン・ソギル)『修羅を生きる』

カン・ソジェ『私は男より預金通帳が好き』

ミヒャエル・エンデ『鏡のなかの鏡』

西尾維新『掟上今日子の備忘録』

森博嗣『探偵伯爵と僕』

小泉武夫『くさい食べ物大全』←もういちど借りた にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/10/13 19:19 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

森博嗣『作家の収支』

1996年38歳のとき僕は小説家になった。作家になる前は国立大学の工学部助教授で、月々の手取りは45万円だった。
以来19年間に280冊の本を出したが、いまだにミリオンセラの経験はなく一番売れたデビュー作『すべてがFになる』
でさえ累計78万部だ。ベストセラ作家と呼ばれたこともあるが、これといった大ヒット作もないから本来ひじょうに
マイナな作家である――総発行部数1400万部、総収入15億円。人気作家が印税、原稿料から原作料、その他雑収入まで
客観的事実のみを作品ごと赤裸々に明示した、掟破りで驚愕かつ究極の、作家自身による経営学。


(裏表紙より)

(ちなみに外来語の最後の「ー」が省略されているのは原文そのままです。理系の世界ではよくある記述法だとか。
それにしてもメジャとかマイナとか書くのはやりすぎな気が……w)

元理系大学の助教授にしてミステリ作家の森博嗣が自身の創作活動における収入のすべてをデータにまとめた本。
印税をグラフにして「この年にデビュー作がドラマ化した」とか解説を加えているのが理系らしくて面白いw

この人は非常に速筆多作で、デビュー作から淡々と発刊を続け淡々と売れ続けている天才極まりないレアケースなので
あまり一般的な作家の収支とは言えないかもしれないが、それでも作家という珍しい生き方のサンプルとして参考になった。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/10/06 23:00 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

小栗左多里『ダーリンは外国人』

国際結婚を題材にしたコミックエッセイ。映画にもなったね。
ふつうの恋愛ものではなく、夫トニー・ラズロ氏の語学うんちくや国際問題への言及が楽しめる
異文化コミュニケーション漫画であるところが特徴。Interestingのほうの面白さ。

久しぶりに1巻を読んでみたら小栗さんの顔デザインがびみょーーーに可愛くない……w
まだデフォルメ化が進んでない原型という感じで面白かった。あまり自分を美化しない人だなぁ。

楽音寺はこの手の女性作者のゆるーいエッセイ漫画がけっこう好きで、
たかぎなおこ『150cmライフ』とか細川貂々『ツレがうつになりまして』とか
蛇蔵&海野凪子『日本人が知らない日本語』とか、
伊藤理佐とか堀田あきよ&かよとかとりのなん子とか、色々読んでいるのだけれど、

読み始めたきっかけが西原理恵子と内田春菊という……w

癒されないエゲツない系の作家の代表格から入門してきているのが、我ながらシュールだと思う。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/09/27 23:25 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

横山光昭『年収200万円からの貯金生活宣言』

貯蓄ノウハウ本。チェックリストや「まず3か月これをしなさい」的なワークシートが充実しているので
そういうのが好きな人や実際に困窮してる人にはそこそこ有用なんじゃなかろうか。

特に新しい発見はなかったけど、楽音寺は自分の貯蓄法が妥当か比較するために読んでいるのでまぁ良しだ。

「強い意志力」なんて根性論よりノウハウが大事だ、という旨の文章には共感した。

「あの高嶺の花を採れる人はきっとジャンプ力が凄いんだろうなぁ、羨ましいなぁ」などと思ってはいけない。
その人は装備を整えて登攀ルートを確立して何度もトライした上で花を得ている。
肉体の基礎ステータスには大きな違いはない。同じ人間種族である。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/09/27 22:22 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

2018 9 27の読書記録

森博嗣『作家の収支』
池上彰『池上彰の世界の見方 中東 混迷の本当の理由』

↑前回読み切れなくてまた借りた2冊。
↓今回借りてきた7冊。

筒井康隆『家族八景』
舞城王太郎『熊の場所』
横山光昭『年収200万円からの貯金生活宣言』
上野正彦『死体は告発する 毒物殺人検証』
       『自殺の9割は他殺である』
小泉武夫『くさい食べ物大全』
小栗左多里『ダーリンは外国人』

やっぱり図書館はええのう……w いつ行ってもわくわくする。素晴らしい。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/09/27 22:21 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

舞城王太郎『暗闇の中で子供 The Childish Darkness』

ミステリ作家・舞城王太郎の初期シリーズ“奈津川サーガ”の2作目。既読。
楽音寺は前作の『煙か土か食い物 Smoke,Soil,or Sacrifices』は凄く好きだけど、今作の評価は微妙。

主人公がふらふらウジウジして頭の回転が(奈津川家にしては)遅く、犯人に対して後手後手に回るのが
爽快感が無くてちょっと嫌だし、巻き込まれ型・被害者型であまり物語を積極的に動かしていない。

『ディスコ探偵水曜日』の主人公のときもちょっとそんな感じだったけど、そっちは最終的には
世界法則とか時空を操る神みたいな存在になるのに対し、奈津川三郎は逆に両手足を失っちゃうし……。
(しかし凄い小説書くな舞城は……w)

それに事件が散発的でまとまりが感じづらく、長い短編集みたいな読み味なのがいまいち好きになれない。

まぁしかし、次々と起こる突飛な事件に揺さぶられる感じは〇。
今作を通して読むのはもう2~3回目だけどやはり毎回驚かされる。
映画『マグノリア』のラストシーンみたいに物語世界が崩壊していく陶酔感を味わうのが正しい読み方なのかな。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/09/20 16:13 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

森博嗣 『議論の余地しかない A Space under Discussion』

工学博士でありながらミステリ作家でもある著者が自ら撮影した写真とともに
自作品からのパラグラフを抜き出して添えたフォトエッセイ。おしゃれ。
同じくPHP文庫から出ている『君の夢 僕の思考』と同じジャンルですね。

氏のファンなら過去作品の印象的な一文に再会できて楽しいはず。
各写真のタイトルや、一言コメントもなかなか味わい深い。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/09/14 08:58 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

2018/9/13の読書記録

池上彰『池上彰の世界の見方 中東 混迷の本当の理由』

森博嗣 『議論の余地しかない A Space under Discussion』
    『作家の収支』

西尾維新『ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹』
     『新本格魔法少女りすか3』

佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』
麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』
舞城王太郎『暗闇の中で子供 The Childish Darkness』

久しぶりに図書館で借りた8冊。
といっても新本格ミステリ系はすべて既読のものだから貸出期間の2週間で読み切れるはず。
楽音寺は同じ作品を何度も何度も味わうタイプなのでよくこういう借り方をする。映画でもそう。

ふふふ、しかし本当に久しぶりで楽しみだ。ヨムゾー。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/09/13 19:01 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

町田康『屈辱ポンチ』

「けものがれ、俺らの猿と(Getting wild with our monkey.)」と「屈辱ポンチ」2編から成る小説。

どちらも明確な起承転結がなく、えっと驚くブツ切りの結末の話ではあるが、楽音寺は好き。
なんだろう。カオスな状況をカオスなまま切り取ったような……。
“中華料理屋の裏路地で24時間カメラを回して無編集のまま映画にした作品”のような……w(なんだそりゃ)


・「けものがれ、俺らの猿と(Getting wild with our monkey.)」
売れない脚本家が謎の老人から映画の企画をもちこまれ、着想を得るために奇妙な取材旅行にいく話。

閉鎖的な田舎で(おそらく警察とグルになっている)詐欺師に出くわしたり、
素麺を口から垂らして歩く謎の祭が催されてている街で暴動に巻き込まれたり、
風邪で発熱した主人公が助けを求めた男が狂人で、朝まで俳句づくりに突き合わされたり……。

あれよあれよという間に日常から異界へと誘われていく感覚はまさに町田康ワールドである。
何も物事が解決しないまま平衡感覚を失いトランス状態に陥るラストは秀逸。


・「屈辱ポンチ」
売れないバンドマンが金持ちの友人の依頼で、面識もない男に嫌がらせをする話。

ターゲット男と一緒にバンド活動をしている帆一という青年が相棒となるのだが、その彼がゆとり思考で面白い。
なんだかボンヤリしてて、指示待ちで、終始ノリが合わず、居酒屋の食事に感動して泣きだしたりする。
一体どういう人生を歩んできたのだお前は……と尋ねたくなる性格だ。

しかしラストでは、ターゲット男のバンドが世間的に人気で、週刊誌にその名前が載るほどだと知った主人公が、
「ではあの阿保の帆一も成功者だったのか?納得いかねぇ!」と落胆する。
恋人にCDを発見され「〇〇君って恰好いいよね」と言われて「そうね…」とかしょんぼり答える始末だ。

その、せこせこと嫌がらせをしていた敵や見下していた相手が、バンドマンとして自分より成功しているという、
自然と苦虫を噛み潰したような表情になってしまう屈辱感がすごい。

遣る瀬無さ。情けなさ。馬鹿らしさ。
やけくそで敵の音楽を鳴らし、歌詞カードをみて歌いながら、女を抱いてくるくると踊るラストは必見。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/06/02 12:00 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

広兼憲史『気にするな』

『人間交差点』『黄昏流星群』『課長 島耕作』などの作者が語る人生訓。
松下電器→独立してデザインの仕事→大ヒット連発の漫画家という珍しい経歴。

根本的に努力家で堅実。バランスタイプ。
思考を辿るだけで「有能な人なんだなぁ」というのが伝わる。なかなか面白かった。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/01/13 18:13 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

やなせたかし『93歳・現役漫画家。病気だらけをいっそ楽しむ50の長寿法』

数年前に亡くなられたアンパンマンの作者、やなせたかし氏の健康エッセイ。
シルバー年齢層に向けた本なのか、頁は少なく文字が大きい。読みやすい。

やなせ氏の生活習慣はなかなか独特。

朝起きて朝食をとり、新聞等を数紙読んだらまたすぐ昼寝する、とか。
高齢者は「こまめ何度も寝る人」と「2日寝て2日起きる人」に分かれる気がする。
そういえば金さん銀さんは後者パターンだったね。

食事は野菜中心。糖尿病のため血糖値に気を遣う……と言いつつ、週一回はうなぎを食べているw

驚いたのは、毎日している運動が腕立て伏せやエアロバイク等、結構本格的だったこと。
93歳でこれが出来るひとはなかなか居ないだろう。すごいなぁ。
自作の体操をしたあとは大声で歌う。もちろん曲は『アンパンマンのマーチ』w

お茶目な爺様だったんだなあ……w

この本は亡くなる一年前に発行された本だけど、溌剌として自由闊達な人柄が伝わってきて、
なんだか不思議な気持ちになった。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/01/09 20:02 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

トマス・ハリス『羊達の沈黙』

若い女性を殺害しその皮を剥ぐという猟奇事件が続発。捜査に行きづまったFBIは、元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクターに示唆を受けようとする。訓練生ながらその任に選ばれたクラリスは獄中のレクターに接触する。レクターはクラリスが、自分の過去を話すという条件付きで、事件究明に協力するが……。トマス・ハリスの同名ベストセラーを完全映画化したサイコ・スリラー。アカデミー賞の作品・監督・主演女優・主演男優賞といった主要部門を独占。


面白かった! 読むのに時間がかかってしまってまだ全体像は掴めていないけど、
文章に切れ味があって実に魅力的だった。また読みたい。
事件の後にクラリスが洗濯機によりかかって眠るシーンがすごく好き。こういう安らぎ描写に弱い。

惜しむらくは、翻訳の癖が若干強い点。
「洋服屋(ブティック)」を「ブーティーク」、「樹木(ツリー)」を「トリ―」と表記する等、
一般的なカタカナ語をつかってくれない。
あと、注釈が必要そうな言い回しや専門用語にも容赦なく直訳をブチ込んできたり……w

まぁ、でも、自分のテイストを押し出すタイプの翻訳ではなく、
むしろ補足説明を基本しない素っ気ないタイプの翻訳で良かったというべきか。

それでこその切れ味。
それでこその登場人物たちの会話のドライブ感だろう。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/01/05 19:38 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

横山光昭 『「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人』

老後に泣くか笑うかは、ほんの僅かな知恵と知識の差だった! 本書は、テレビでお馴染みの人気FPが、
老後資金の安全な貯め方から防衛術までをやさしく伝授。「もらうべき退職金を事前に運用する」
「保険などの固定費を徹底的に見直す」「50代からは1万でも2万でも多く貯蓄に回す」など、定年後に
後悔しないためのノウハウが満載です。一生お金に困らず、楽しい老後を送るための一冊!文庫書き下ろし。

(裏表紙より)

2015年初版。なかなかタメになる普通に面白い本だった。貯蓄の基礎が学べる。
「生活レベルを上げない」「固定費を見直す」「“お金をつかわない日”を作る」
などは楽音寺も実践しているので、「やっぱりそうだよなー」と満足気にウムウム頷きながら読んだw

それにしても、お金ってすごく大切な事なハズなのに、ローンを借金だと認識していなかったり、
いくら出るか分からない退職金をあてに人生設計をするヒトは多いようだ。不思議。

この人の本、他にも読んでみたいと思った。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2018/01/01 20:57 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

ちきりん『未来の働き方を考えよう』

「人生は2度生きられる」をテーマにした自己啓発本。

・インターネット社会の発達により世界中が〝市場”になった。
日本の会社に所属していても勤務地は海外、ということが増えるかもしれない。
これからの若者はそうした中でいかにして子育てをするのか。

・さらに現代では人間の寿命が延びていて、当然それに伴って定年も延びる。
学校を出てから80才まで働かなくてはいけない可能性がある。
それだけの期間を一つの会社で働き続けることはできるか。

・貯蓄(ストック)より収入源の確保(フロー)が大切。
こつこつ貯めるだけだと企業から離れた途端に収入がなくなってしまう。
稼ぐ能力を育てておけば企業から離れても生きていける。

・終身雇用が望めない以上、大企業に固執するより流動的な働き方を考えるべき。
子育てが落ち着く40代を目安に人生の前半後半で違う仕事をするのはどうか。


……といった感じの内容。

読んだ感想。相変わらずこの種の本が好きではない。
でもまぁ、強引で都合のよい洗脳的文章は多少あるものの、そこそこ面白かった。

貧困であえいでいる人を救う書物ではない。

経済的に余裕が(素晴らしい才能が、並外れた情熱が、整えられた環境が……)ある人間に、
「こういう生き方はどうですか」と選択肢を提供する本だった。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2017/09/27 07:06 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

阿刀田高『新約聖書を知っていますか』

実力派ミステリ作家による新約聖書の解説エッセイ。聖書における様々な謎をミステリ作家らしく推理する。
著者は宗教者ではなく研究者といったスタンスで、非現実的な、いわゆる“奇蹟”については
一貫してクールな態度で距離を置いている。冷静で読みやすい。

宗教者である三浦綾子の聖書解説本(『聖書に見る人間の罪』)も読んだことがあるが、
あちらは非常に感情的で、ええと、なんというか、冷静ではなかったので……w
楽音寺としては阿刀田高の方が好きだ。

新約聖書の内容をわかりやすく分類し、必要な基礎知識を補完しながら読者といっしょに読み解いていく。
本には折り畳まれた地図も付属されており、聖書に登場する地名の位置関係も勉強できる。

著者は執筆にあたり旧所名跡を旅していて、旅行記としても良い。風光明媚で情緒ある文章を楽しめる。
古い教会や博物館に絵画『ピエタ』を見に行ったくだりなどは筆力に圧倒されてしまうほどだ。流石である。


本作は『ギリシャ神話を知っていますか』『コーランを知っていますか』等の解説シリーズ中の一冊で、
『旧約聖書を知っていますか』の続編にあたるらしい。そちらも読んでみたいと思わされた。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2017/09/13 08:35 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

西丸震哉『山歩き山暮し』

大賑わいの登山コースには見向きもせずに、何やら怪し気な山々を探し出しては
踏みこんでゆく西丸式登山術。山中滞在のさまざまな創意が人生の知恵にもつながる
ユニークな山のエッセイ。

(裏表紙より)

昭和49年の本。著者は食生態学者、探検家、大学講師など多才な人であるようだ。
論理的でシニカルな文章からもそれが伝わった。

国内外を問わず、あらゆる自然を踏破してゆくバイタリティ。
部下や友人にかこまれ、高齢ながらも誰より斬新でユニークな人柄。
ちょっと皮肉で斜に構えたような、学者らしい世界の捉え方。

いずれも浮世離れしていて非常に興味深い。

以下、長くなるが、楽音寺がとても気に入った文章を模写しておく。



やがて周囲は岩壁が切り立ってきて暗い感じとなる。
ジトジト雨が降ってますます陰気ななかを、本谷の大滝を登るなんていやだなあ、
どこにも死体なんか見つからないとうれしいな、と考えはじめ、一段急な雪渓を乗り越え、
上の平へ身体をせり上げてとび出したちょうど目の前に、おめあての死体が寝ていた。

 突然出っくわすのはいやだぞと、あれほど用心していたのに、ものすごく意地悪なところで
彼は待っていたのだ。大滝登りはしないですんだけれども、桶の底みたいな暗さと
音もしない雨の中で、私の心臓は頭へ移住したらしく、ガンガン耳の奥でとびはねた。

 兵隊の服、ズボンはひざの下でズタズタに切れてなくなり、軍靴は靴下のない足にちゃんと
はまっていた。小さなザックを背中につけたまま空を向いて口をあげ、雨水がたまった口には
ウジが充満していた。大きなニクバエがいっせいに飛び立ち、その数はおよそ四、五十匹。

 胸のポケットに指をそっとさしいれると、一枚のぬれた布をへだてて細かい動きが伝わってくる。
死体が寒さで震えているのかと思えるような、皮膚の下側にいっぱいつまったウジのうごきなのだ。

 まず身元を確認できるのものが見つからないと困る。現金が千二百円だったか、女物の服をカタに
二千円を借りた値札、他人の名刺。

 ザックの中をあけるのには苦労した。腕を通したまま上にのしかかっていて、なかなかひきずり上げ
させてくれない。ようやく口から手をつっこんだが、出征のときのものか、寄せ書きをしてある
日の丸の旗くらいしか目ぼしいものがなかった。軍隊では死なずにすんで復員して大学へもどり、
わざわざ質屋から旅費を借り出して、九州からはるばる上高地へひとりでやってきた青年、
そんなにまでしてここまでこないではいられなかったのか。

 おそらくは涸沢へでも入るつもりが、まるっきり別のところへ引き寄せられ、それでももどることを
考えつかなかったのか、岩でしたたか落ちたスネのすり傷と、ヤブですり切れた服。この位置で
死をむかえ、どのくらいの時間が死ぬまでにあったのか、さいごは体温がぬれた服から流出して
疲労凍死というわけか。たいして低温でもない夏、凍死というのは聞こえが良くないが、それがいちばん
適当だと思えたし、今でも、彼の死因はそれでいいはずだと思っている。

 他人の名刺の裏にこの場で死ぬ前にエンピツで書いた文章があった。

 いつまでも雨はやんでくれない。太陽よ出てくれ。お母さんゆるして下さい。もし助かったら二度と
再び山へなんか行かない。そんなことが七、八行にわたってかなりしっかりした字で書かれていた。

 そうさ、君が死んでずいぶん経ったが、まだ雨はやまないし、太陽も出ないんだよ。



この本は、軽妙で機知に富んだ内容がほとんどではあるのだが、この部分だけはとてもゾッとさせられるのだ。
自分からは遠いはずの山の雰囲気が、読み進めるうちに足元から首筋へヒタヒタと迫ってくるようで、
読書をしながらため息が出てしまった。すごく良い。これは面白い本に出会えたぞと思った。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2017/08/19 17:38 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

本田健『30代にしておきたい17のこと』

よくある自己啓発本。著者は『ユダヤ人大富豪の教え』という本でも有名。
べ、べつに職場が異動になったからって急にこういう本読みだした訳じゃないんだからねっ!///

内容的にはまぁ、本当に「よくある自己啓発本」で、あまり目新しい所はなかった。

「そろそろ人生の路線を決めよう」
「人脈を大切に育てよう」
「親に優しくしよう」

みたいな……w


ただ、「才能はかけ算」という一節は気に入った。

社会では大概「〇〇に詳しくて2~3時間プレゼンが出来る奴」といったように複数の才能が求められる。

オリンピックで金メダルを取るような特別な才能が無くても、
スピーチ能力であったり人材育成であったり資産運用であったり、
細かいスキルの組み合わせによって人はオンリーワンの仕事ができる……というもの。

最近、自分自身でも似たようなことを考えていたので、この部分は大いに共感できた。
この一文に出会えただけでも有意義だったかな。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2017/08/03 19:01 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

サミュエル・ライダー『ライオンは眠れない』

ブッシュは再選された。では小泉構造改革の是非は?
預金封鎖は本当に起こるのか? 我々日本人に明るい未来はあるのか?
ライオンやジャジャネコ、タカやハトなど魅力たっぷりの動物が活躍、
わかりやすく現代政治の盲点・問題点を解説してくれる。
トヨタの奥田会長が、ビジネスマン必読の書として激賞。
30万部のベストセラー待望の文庫化。

裏表紙より。

・イギリスのジャーナリストが書いた日本経済の本。
平成16年初版発行。
175頁くらいで、内容は軽く、『チーズはどこへ消えた?』みたいな系統だ。

・「中国の謎の老人から渡された大昔の寓話を読んでみたら、
それは驚くべきことに、日本の未来を暗示した内容だった!
著者と日本人ファミリーは、協力してそれを読み解いていく」

という“設定”で書かれているが、これは失敗だったのでは……と思った。

最初から物語として書けば良いのに、最初から最後まで一貫して
ノンフィクションとして主張している。その割に、内容はあまりにも胡散臭い。

「大昔の中国の寓話」なのに「国会議事堂」「電車のプラットフォーム」「Xデー」等の語彙。
文体は雰囲気もへったくれもなく、登場人物や国名を入れ替えただけ。

中国→「龍の国」
米国→「鷲の国」
日本→「鼠の国」
小泉純一郎→「ライオン首相」
自民党→「ズボン党」

ズボン党って。


・日本の神話、歴史、経済史、ことわざ等にも触れられていて、
著者は一応 日本のことに詳しい感じではあるのだが、
なぜかスピリチュアルに傾倒している節があっていまいち好きになれない。

「古代中国の予言書と僕の論文の運命的なシンクロ二シティ」とか、波動がどうとか……。
田中真紀子にスサノオの魂が憑依してるとか言うし……w

・よくイギリスと日本は同じ島国だから気質が似ているなどと言われるが、
自虐好きな日本人と皮肉好きなイギリス人が出会うと、
一方的に嫌な雰囲気になるだけだなぁと思った。

「我々があえて謙遜している物事に 喜び勇んで乗っかってくるウザい奴」という印象。
“鼻持ちならない”とはこういう事か、と感嘆せしめる本であった。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2017/08/03 10:22 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

群ようこ『餓え』

私生児、貧困、母との絆、義父、行商、女工、失恋、夢、結婚、震災、戦争、パリ、養子、死。

明治36年に生まれ、母と共に生家を出た7歳の時から、『放浪記』がベストセラーになる26歳まで、
尾道、東京で極貧の放浪生活を続けた作家林芙美子。

文学への憧れと母娘の愛を糧に生き抜いたその劇的生涯を、
人生のテーマごとに現代の人気作家がたどる全く新しいタイプの興味つきない人物エッセイ。

裏表紙より


★★★
花の命は短くて
苦しきことのみ多かりき
★★★

昭和の女流作家 林芙美子の生涯を、
現代の女流作家 群ようこが読み解く自伝的エッセイ本。

時代を隔てたふたりの女性が仕事観や恋愛観を戦わせる感じでなかなか面白い。
しかし、どちらも偏屈な人物だなぁ……w


楽音寺はあまり林芙美子の著作を読んだことはなかったけど、
この記事の冒頭の詩(花の命は…)と、

「うで玉子飛んで来い。
 あんこの鯛焼き飛んで来い。
 苺のジャムパン飛んで来い。
 蓬莱軒のシナそば飛んで来い。
 ああ、そばやのゆで汁でも
 ただ飲みして来ようか。」

という一節だけは知っていた。生活感がよく出た名文だと思う。


それと、彼女の葬儀のもろもろを取り仕切った川端康成が
「林さんは生きている時に、他の人に対してひどいこともしたのでありますが、
 あと2,3時間もすれば、灰になってしまいますから、
故人をどうぞよろしてやっていただきたい」
と言ったエピソードも有名だろう。これも彼女の日頃の行いが垣間見られる名文だと思うw


創作者の 為人(ひととなり) は、時として作品よりも面白い。

「劇的な人生」は舞台よりもドラマチックだ。

パリの街角で、着物を羽織り、黒下駄でぽくぽく歩く林芙美子の姿を、
この本の読者は幻視するはずである。楽しい読書体験だった。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2017/07/24 10:50 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

2017 7/16の読書記録

安岡章太郎『僕の昭和史』Ⅰ・Ⅱ
大濱徹也『明治の墓標 庶民のみた日清・日露戦争』
大江健三郎『われらの時代』

本田健『30代にしておきたい17のこと』
高橋龍太郎『あなたの心が壊れるとき』

片岡義男『一日中空を見ていた』
上野正彦『死体は語る』

阿刀田高『新約聖書を知っていますか』
妹尾河童『河童が覗いた「仕事場」』

T・ハリス『羊たちの沈黙』
スコット・マキューエン&トマス・コールネー『スナイパー・エリート』
スティーブン・クーンツ『ザ・レッドホースマン』上下
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[ 2017/07/16 13:05 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)

解説本版 J・カンピオン『ピアノ・レッスン』

映画版の解説本。
スタッフへのインタビュー、メイキング、シナリオ脚本などが収録されている。
なかなか興味深い。


・監督のジェーン・カンピオン自身がニュージーランド出身。
植民地時代のマウイ族の姿を誇張することなく再現したかった、とある。

時代考証にかける努力は並々ならぬもので、
「劇中、彼らが咳をしたり鼻水をすすったりしているのは、
西洋人が持ち込んだ病気に免疫がないため」。
また、それぞれに名前やキャラクターがちゃんとつけられている。


・背景となるニュージーランドの原生林にもこだわり、自然光で撮影したり植林したりした。
鬱蒼として、霧に包まれ、まるで水中を泳ぐような湿度の密林を表現するために
美術スタッフには「水槽の底のイメージで」と伝えた。

・主人公エイダ役は最初はシガニー・ウィーバーが演ずる予定だったが、
ホリー・ハンターがオーディションで驚異的な演技力と“ピアノの演奏力”を披露したため
彼女がヒロインに抜擢された。(作中の演奏シーンも実際に弾いている)


・旦那であるスチュアートは監督いわく、童貞。

・主人公が旦那の身体を触るシーンは“相手をセックスの道具として見る行為”。
ヴィクトリア朝の女性がそれを行い、男性側が傷つく、というショッキングな描写だとか。


・シナリオ脚本を読むと映画ではカットされている場面がちらほら。
文字の読めない浮気相手が、鍵盤に記された主人公からのラブレターを解読するために、
教会で勉強している子供達に頼んで読んでもらう、というシーンが良かった。
その内容が嬉しくて「もう一回読んで」と何度も頼む姿が、おっさんの癖に可愛いのであるw


・その他諸々、映像では分かりづらかった場面が文字に起こされているので理解の助けになった。
こういう本も面白いものだね。うん、読んでよかった。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ
[ 2017/06/26 21:16 ] 紹介・レビュー 読書 | TB(0) | CM(0)