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季節はずれすぎる短編 『ブラッド・ヴァレンタイン』

神獣達の宴 2013 『ブラッド・ヴァレンタイン』


「のっくのっく!こんこん。
ヒミコ~、ひさしぶりに遊びにきたレナですよ~。こんこん。
あけてくださいな、こんこん、こーんこん」

よく晴れた日曜日。

その朝、最初に神獣館の扉を叩いた麦藁帽子の女は、
リズミカルなノックを数分ほど打ち、反応がないのを確かめると
困ったような顔で相方を振り返った。


「…あれー、どうしよう瑛子~、皆いないのかな~?」

問われて返す緑髪の女。涼やかな美人で、丈の短いチャイナドレスが似合う。


「『皆いないのかな』?…まさか。
…でも確かに珍しいわね。
貴女が一曲分を演奏し終えるまで誰も出てこないなんて」


「ね~。いつもすぐミブキ君とかミミウちゃんとか、足の速い子がきてくれるのにね~」


首を傾げる麦藁帽子だったが、すぐにピンと思いついて言う。
「あ、もしかして、みんなまだ寝てるのかも?」
「あー…」

朝とはいえもう10時近い。
が、彼女たちの訪ね人は常識的な連中ではない。

「『まだ寝てる』ありえなくはないわね」


「どーしよー、起こしちゃう~?レナできるよ?
思いっきり大きな声で鶏の鳴きマネ。
たぶん460デシベルは記録すると思う」

「それは『鶏の鳴きマネ』じゃなくて怪獣の雄叫びでしょ…」

冷静に緑髪がツッコむ。ちなみに飛行機120デシベル。

「至近距離にいる私もタダじゃすまないし、自衛隊が出動しかねないから、それはやめて」


「ええ~、じゃあ目覚まし時計のマネは?」
「貴女の『目覚まし時計』は皆が永眠するから却下」


「ラジオ体操は?あーたーらーしーい、あーさがきたー」
「『ラジオ体操』もダメ。健康に悪いわ(鼓膜と心臓的な意味で)」


「え~…」がっくし、と頭を垂れる麦藁帽子。

「じゃあ、もうレナに出来ることはないよぅ…万策尽きたよ…帰ろう…」

「『万策尽きた』?すぐ諦めるのが貴女の悪い癖だわ」
と、自分でダメだしをしておきながらバッサリと言い放つ緑髪である。



彼女は――形の良い眉をひそめると、

やれやれとばかりに息を吐き。

チャイナドレスの高く切れ上がった裾から、

すっ…と太ももを覗かせて、扉の前で格闘のポーズをとる。



「こうすれば良いでしょ」

神獣館の正門の重い扉を、鋭い呼気とともに蹴り砕いた。



CRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAASHH...!!!!!!




「わわわっ…!?」

思わず耳をふさぐレナ。が、金属が爆砕する激しい音………………は、しなかった。
(!?)


見ると、オーケストラの指揮者のような瑛子の仕草にあわせて、
空中に飛散した鉄の破片が空気ごと固められたかのように静止していた。

爆発四散した金属のジクソーパズルが宙に固定されている。
まるで無声映画のひとコマのようだった。


「はりゃ~…」
「『はりゃ~』なんて呆けてないで、こっちおいで。レナ」

しれっとした顔で、砕けた扉を通り抜けて
神獣館に入り込んだ瑛子がちょいちょい手招きをする。



「…で、巻き戻し」


!!!!!!...HHSAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARC



『音』と『現象』が逆再生され、二人を内側に招き入れたまま扉はもとに戻っていった。

とても静かである。



「…私達はヒミコに会いたいだけなんだし、皆を起こすのは悪いわ。
静かにそっとお邪魔しましょう」

(続く)
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中途半端な失敗作×3



ダイアル西部には、南北に走る河川に隔てられた4つの領地がある。

街道に近い商業地 悦楽郷ゴールドウィン。
霊峰のふもとに佇む地 冷えた白銀剣ゾラン。
穏やかに広がる小麦畑の丘 抱擁の庭シルバニア。
豚のごとき豊穣の自然 亜族の聖域ヨルノモリ。

シルバニアの領主ヴァンは公称23という弱冠の王であり、
他の王達に妬まれ、事あるごとに圧力をかけられる立場だった。

これは、そんな彼の、苦労と成長と栄華の記録である。



-1-

世界地図の『北』を上として見た場合、彼の生まれ故郷“抱擁の庭シルバニア”は
広大なるなだらかな丘陵の中央、十字架形のくぼみに抱かれるようにして存在していた。

かすかな高低差だが、そこには水の流れが生まれ、
農作物の生長を促進する豊かな甘い風が吹く。

必然、かの土地は肥えた。

幸運であった。

ダイアルの広い大地が生み出す全ての価値が、そのくぼみによって
“蜜が流れ込むように”集まっていった。


現在の地政学者によれば、すべてが平均化する無限の平野の只中にありながら
これほどまでに富が“偏る”ことは珍しい、という。








某帝都の郊外。
冬。
枯れ木の並木道に面した建築物――
ただよう陰惨な雰囲気から、周囲の住民には“墓標ビル”の名で親しまれている(いない)――

さびれた7階建てのビルでの話である。


4F。
からりと晴れた空に誇らしげに掲げられた“タナス探偵事務所”の看板には、なぜか弾痕がいくつか。
カラスが巣をつくっているらしく、看板の周囲にはいつもあの不吉な黒い生物が群がっている。

その名前以外の情報が皆無な看板といい。
常に完全遮蔽されているガラス窓のブラインドといい。
その部屋の扉へ至るまで、3度の身分証明および指紋認証が必要な厳戒態勢といい。

なにもかもがクライアントの訪問を拒絶している――こんな場所に客が来るのだろうか。


来る。

来るのだ。

それも、とびっきりに厄介な問題を抱えた“客”が。






野生の獣の鬣のように髪を長く伸ばした高校生が、
全身複雑骨折の末にギプスで固められてベッドに埋もれている。

部屋は3人部屋で、いまは彼とその隣のカーテンでしきられたベッドにしか
客はいないようだ。

薄味の昼食が終わったばかりの、休日、昼下がりである。

「痛てて…がははは、こんな大暴れは久しぶりやのぉ…。
たしか5高の不良共と同時に戦った一年の夏休み以来か。
なぁ竜胆のォー、そうじゃろー?聞いとるけ?」

しかし隣のベッドから返事はこなかった。
首をかしげる長髪の男。

「…あぁん?おい、寝てしまったんか」

「なに独り言を言ってるんだ、狼の」

がちゃりと扉をあけて出てきたのは、
きっちりと詰襟を着こなしたマジメそうな高校生。
手にお菓子などが詰まったビニール袋をさげている。

「!? うぉぉおおいっ、なんでお前だけ外出しとるんじゃあ?
ワシと一緒に入院しただろうがっ!――け、怪我はっ」

「治った」

「なおるかァーー!ばっかもん、どんなデタラメな体じゃ!」

「あ、フライドチキン食う?」

「もっと怪我人らしく消化にいいもんを食え!
ってゆーかお前、歯全部折れたハズじゃろッ」

「歯なんか一晩で生えるよ」

「生えねーよ?お前絶対哺乳類じゃねぇぞ!?

「うるさいなぁ、哺乳類だってば。あ、堅焼きせんべい食う?」

「人の話をきけええええええ!!!」



――騒がしい彼らは、竜と狼。

“請負人”姫路竜胆

“番長”猪熊辰狼。

最強の高校生コンビにして、生涯の喧嘩友達である。
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バトル書く前に力尽きた短編『鳥類学者とちいさな村』

“鳥類学者(ウィングハンター)”を名乗る空賊の飛行船から
ボロボロと落ちてきたのは
凶暴なことで知られるヒクイドリの魔獣である。

長い首をもたげると人家の屋根を軽く越す体長。
幅広く鋭い嘴(くちばし)。
燃える炎のごとき美麗な扇状の羽。

甲高き鳴き声(ハミング)で詠唱しているのは再生の呪文だった。


遥か高い島の上空から落下して、地上でぐしゃりと潰れて赤い花を咲かせ、
しかしすぐに再生によってゾンビのごとく蘇る鳥達。

こぼれた眼球や折れた翼も数秒で癒されていく。

――ヒットポイントは無限!痛みにも怯まない!
   その体温は鉄が溶解するほどで!
     嘴の一撃は、鉄爪による蹴りは、
       人体を容易にバラバラにするだろう――!


そんな化け物が、島の上空から火の雨のように降ってくる――

「ど、どうしましょう…」わたしのうめき声に

「降り掛かる火の粉は払うべきだと思うがね」男爵が、笑顔で軽く答えた。



(う、うう…簡単にいってくれますね…)
わたしは恨みをこめて男爵を睨む。

わかってる。
ただ珍しい鳥を採取するために島に滞在しているだけのこの人が、
わたし達を救ってくれることは無い。

むしろ「あの魔獣は珍しいから殺すな」とか言われなかっただけマシだ。


(――くっ)
唇を噛んでわたしは立ち上がり、自室の隅に立てかけてあった剣を握る。
村には(わたしを含めた)ズブの素人と、老人と、子供ばかりだ。

それでも…それでも男爵は動かない。
自分に降り掛かった火の粉は、自分で払えと言うだろう。

「め、滅亡しても…村が滅亡しちゃっても、知りませんからね!」
「私は何も困らない」
「もっと人類にも愛をもってくださいよ!」

鳥類だけじゃなく!…と、吼えるように言い残して、
私は涙目で部屋の窓から外へ飛び出していく。



ざざっ!家の裏手の草地に着地し、
がちゃがちゃと剣を鳴らせて表通りへ駆けつけてみれば、
わたしの小さな村カザーブはすでに火の魔獣に襲われていた。

「あ、ああ…っ。なんてひどいっ…!」


あちこちの樹木はすでに炭と化している。
道には逃げ惑う人々と魔獣が闊歩し、、
レンガの塀は蹴り壊され、
教会は燃え盛る炎に包まれて、もうもうたる白煙を吐き出している。

民家は食い荒らされてボロボロだ。
おじさんの家の二階に大穴があいていて、
鳥の魔獣がその長い首をにゅうと伸ばして中に突っ込んでいる。

メキメキと壁を砕きながらなにかを探して…
やがて引っ張り出したのは、4歳くらいの女の子だ。

「やぁあああっ!だれかたすけてぇっ」


(ああっ!?)
驚いて後ずさった私の靴が地面を擦る。ずさっ、という音。


「やぁっ、やだ!こわいよー!」
手足をバタつかせる女の子を嘴にくわえたまま、魔獣はぐるりと首をこちらに向けた。
音に反応したのか。

ぐ、とわたしの手が緊張する。剣を…構えなくては…!

魔獣の瞳の奥で暗い炎が踊った。
彼(?)は――嘴を離し、女の子を空中に放り投げた。

(!!)

わたしは思わず走り出す。剣を捨てて。前へ手を伸ばして、
壊れた民家のふもとへ――魔獣の足元へ。

スローモーションで落下する女の子のピンク色の寝巻きがやけに目に焼きついた。

じ、地面は土だ――頭さえ打たなければ――
私の上半身をクッションにして彼女の頭部を抱きかかえれば――

魔獣は、おそらくそれを狙っていた。
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TRPGリプレイ風小説

友人とのメール転載シリィィイーー↑↑↑ーーズーーー↓↓↓ーーーーぅ 第四弾っ!
はーーじまーーーるよーーーーー!

さぁムダにテンションをアゲなければとても乗り切れないこの黒歴史発掘企画ですが、
第四弾はこちら、

TRPG(テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム)に興味を持ち始め、
無謀にもシステムの自作(!)をはじめた友人に贈った
架空のリプレイ風小説でございます。

「TRPGってこんな感じなんだ」という雰囲気を掴むのに役立てばいいな、と思って
楽音寺が昔読んだソードワールドのリプレイ小説を思い出しながら書きました。

名前つき登場人物はすべて友人のキャラ。
システムやルールはこの時点では完成しておらず、適度に省略しています。



ヒミコ「――じゃあ、まずはキャラを作成してもらおうかの」

ミブキ「僕とーぞく!お宝をどんどん盗んじゃうぞー」

ミユル「俺は戦士だな」

イリュウ「私は…魔術師にしましょうか」

ミナキ「みんな分かってないなぁ、こういうゲームには僧侶が必須なの。
    しょうがない、ここは一番TRPGに造詣が深いわたしが回復役を買ってあげようかなっ」

ヒミコ (ミナキはどうやら経験者のようじゃな…ふふ、手加減はせんぞ)



~四精神霊とヒミコがTRPGをするようです~



ヒミコ、以下GM
「最初に決めるのは種族、職業、キャラの来歴と性格、
 初期獲得スキル、所持金の範囲での買い物じゃ」


ミブキ「…できた!
僕はホビット(小人族)の盗賊ミブキ。
故郷を飛び出して旅をする風来坊で、顔も知らない妹を探してます。よろしく!

最初のダイスロールで6を出して
【熟練の冒険者:3ポイントを初期レベルか所持金(×1000)に追加する】って生い立ちを得たから
それに見合う設定にしてみたんだー。
ポイントはレベルに1、所持金に2振ったよ」


ヒミコ「ほう、ならミブキだけはレベル2からスタートじゃな。結構結構w
    しかしやけに幸先のいいスタートじゃが…
    おぬし、ダイスにイタズラなどはしておらんじゃろうな?」

ミブキ「(ぎくっ)…と、とにかく、レベルに応じた成長をさせるからね!あと買い物もしちゃうよ」

盗賊ミブキ HP18 MP10 攻撃16 防御16 知性20 精神21 敏捷40
獲得スキルは【短剣】【パリィ】【罠感知】【鍵あけ】【盗む】。
所持金1000+2000

ショートソード――(攻撃時2D6のダメージ追加)
羊皮の鎧――(防御時1D6のダメージ軽減)
食料――(3日分:尽きたら休憩でHP 回復なし)
水――(3日分:尽きたら休憩でMP 回復なし)
帰還の巻物――(ダンジョンからすばやく脱出する)
ロープ――(長さ20フィート、大人8人分の体重を支える)
くさび――(扉を通行不可にする)
盗賊七つ道具――(【盗む】の成功判定+1)

固有アーティファクト(キャラ生成時にひとつだけ持てる特別な魔道具)は、
距離に関係なく【盗む】を実行できる『猫の瞳の指輪』。

計2800で残金200ユロン。



GM「うむ、初心者にしてはなかなかじゃ。やるのう!“盗賊ミブキ”よ」

ミブキ「へっへー」

ミナキ「あーん、ミブキばっかりズルい~。
    次はあたしねっ。お淑やかだけどすごい力自慢の僧侶で…」



(中略)



GM「…この街の酒場でぐうぜん出会ったお主たちは、意気投合し、
  一緒にパーティを組んで手軽なクエストをやってみることにした。
  王都フィルモリアからほど近き農村カザーブ、
  その南に狼男(コボルト)の湧く洞窟があるという…。
  場所はここから3日ほど、報酬は1500ユロンじゃな」

ミブキ「3日!?せ、せっかく買った食糧が無くなっちゃうよ~」
ミリュウ「ちょっと遠いですね…」

ミユル「ふむ…ゲームマスター、根性で寝ないで歩けば一日半で着かないだろうか?
    なんなら俺が全員おぶっていくが…」

GM「(呆れて)ミユル…PCはお主ではない、普通の冒険者なんじゃ。
  筋肉バカも大概にせんか…w」

ミナキ「んー、私のキャラ、レンジャー技能をもってるのに
   【野外調理】を獲得しなかったのは失敗だったかもー」


GM「(こいつはスキルを大体把握しておるな)
  と、その前に全員、狼男(コボルト)の知識判定をしておこうかの。
  10D6を振って“知性”以下なら魔獣の生態から弱点から看破できるが…
  
失敗したらお主らのキャラは
「こ、こぼるとってアレだろ?ほら、カリッとして美味しい、あの…」
みたいなカンジの残念なアホになる!」

全員「え、ええーっ!?」

GM「ふぁっはっは、どんなに格好つけたキャラを作ってもダイスの目ひとつでネタになる、
  それがTRPGの醍醐味じゃ!
  楽しめ初心者パーティ共よ!」


(中略)


GM「洞窟はかび臭く、天井の鍾乳洞から水がポタリと落ちてくる…
  はい、奥から足音がしてきたぞ、
  【聞き耳】もってるやつはダイスを振れ」

ミブキ「えー、なんかさっきからボクばっかダイス振ってない?
    盗賊だから仕方ないけどさぁ…えいっ」

コロコロ。――4、8、13.

GM「達成値は7じゃから二個成功じゃな。
  それじゃ『足音には“チャッチャッ”と爪で地面を搔く音が混ざっている。敵は獣人のようだ!』
  というところまで判明するぞ」

ミリュウ「獣人――コボルトのお出ましですか!」

ミナキ「うん、この足音はコボルトだね!」

ミユル「…。『こ、こぼると?なんだそれ、美味いのか?』…」

ミブキ・ミナキ・ミリュウ「ぷぷっwwww」

ミユル「いや、俺もコボルトくらい知ってるが、
   し、仕方ないだろう!さっき知識判定で1ゾロ出しちゃったんだから!」


GM「かははwwwww 
  えー、それじゃポカンとして何の身構えもしなかったミユルは先制ターンは一回休みだな。
  獣人の脅威の跳躍力に対応できた三人は…」


(中略)


全員「勝ったーーーーーーーーー!」


GM「断末魔が尾をひいて洞窟の奥に反響した。
  仲間の悲鳴におびえて他のコボルト共もこの地域から逃げさるだろう。
  依頼は成功だ!」

全員「クリア早ーっ!?」

GM「しかぁし!」

全員「!?」

GM「お主らが背後を振り返ると、カザーブの村人が総出で入り口に群がっていた!
  全員が手に松明をもち、その目は死んだ魚のようだ。
  村長が口を開く…「ふん、イケニエがわりの冒険者の割にはがんばったではないか」」

ミユル「なんだと?」
ミブキ「イケニエ!?それってどういうことだー!」

GM「「ふははは、実は最初から報酬など払う気はなかったのだよ!
  貴様らは用済みだ、この犬の巣で朽ち果てるがよいー!」
  
  村長はそういって手にした松明を投げた。入り口にはすでに油が撒かれている――」


ミナキ「えええっ、意地悪な筋書き!初心者殺しもいいとこだよ~!」

ミブキ「くっそ~、炎で視界がふさがれる前に弓打っちゃえ、弓!」

ミリュウ「…マスター、さきほど覚えた【水流操作】の術、
    床を覆う油膜にも適用することはできますか?」


GM「(おっ、やるではないか)…魔術師ミリュウ、その提案を受けてもいいが、
  その魔術は効果範囲が“接触”じゃぞ?
  ヘタをしたらお主は油膜を散らすより先に――」

ミリュウ「構いません。【水流操作】」

ミブキ・ミナキ「み、みるる格好いいーーー!!??」


GM (…ふふ、みなすっかり役柄にハマってくれているようじゃのう…
  こちらのマスタリングにも気合が入るわ。
  どうか最後まで良いセッションであっておくれよ)


(中略)



ミブキ「ぷっはーーーー!やっと酸欠状態の洞窟から出れたねっ。
    なんかボク(プレイヤー)まで息苦しかったよw」

ミナキ「まさかあの時助けたコボルトの子供に逃げ道を教えてもらえるなんてね。ちょっと感動しちゃった」

ミリュウ「…ふ…良かった…です…」

ミユル「ミリュウ、これで王都まで戻れるぞ。
    それまでがんばれ。
    俺たちパーティの全財産を使ってでも傷は治してやる」


ミナキ「でもこれで報酬もなし、かぁ。
    村人の策略にハメられてお尋ね者なんて、ひどい話よねー!」

GM (ニヤリ)

ミリュウ「……いいじゃないですか、私は楽しかったですよ」

全員「え?」


ミリュウ(視線を送る)
GM(頷く。打ち合わせどおりにな)


ミリュウ「だってほら、素敵な仲間がひとり増えましたよ……いや、いっぴき、でしょうか?」


GM「焼け焦げた彼女が指差した先は、夕陽に染まる草原。
  そのライ麦の穂をかきわけて、ぷはっと顔を出し、ぷるぷるとむず痒そうに首を振る犬の姿があった。
  額に十字の傷。
  あの孤児となったコボルトだ。
  彼は、仲間になりたそうにこちらを見ておるが――ふふ、どうするかのう、諸君?」


ミブキ・ミナキ・ミユル「…っ!?」


皆が驚いて、顔を見合わせ、すぐににんまりと笑ってコボルトに向き直った。
その口から出た答えは――





《ここでこのリプレイは終わりです》

《次回、王都に戻った冒険者たちの前に現れた謎の女召喚士・ミコトとは?》

《次なる目的地は古代遺跡:ダーマの神殿!?》

《竜の背中に乗ってダンジョンを走破せよ!》

《…などなど、またも意地悪なシナリオがてんこもり。がんばれ精霊アドベンチャーズ!》


+++THANK YOU FOR PLAYING!+++





おまけ

ミユル「…なぁ、ところで俺ってまだコボルトって種族を知らない設定なのか?」
ミブキ「ここまでネタにされたんだから、もうずっと知らないほうが美味しいんじゃないw」
ミユル「そうそうっ、隙あらば仲間のコボルトくんを食べようとする腹ペコ原始人キャラでいこうよ!w」
ミユル「お前ら…」

おわりw
超ノリノリで書いてるのが我ながら恥ずかしいですねw
でも、まぁ、卓上ゲームにおけるあの独特のノリは表現できた気がします。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ

京極夏彦の文体模写というか二次創作というか

友人とのメール転載シッリィーーーズ。
えっと…いえー…どんどんぱふぱふ…(←眠いのに無理矢理テンションあげてる)

今回やっているのは無謀にも、重厚かつ荘厳な文体で知られる妖怪作家…
京極夏彦の文体模写というか二次創作というか…
だよー。

このブログの殺人鬼デイの人間カルテという作品に登場している、
斬ったものを水に換える殺人鬼デイ(友人のキャラ)が京極世界にお邪魔したらどうなるか、的な…

ごくごく身内だけで楽しんでいる超個人的クロスオーバー小説です。

(以下はメール抜粋)
京極堂のフルネームは中禅寺 秋彦だよ。
さんずいが入ってる登場人物は榎木津とかかな?
しかし京極堂なら愉快犯のデイに明確な目的を与えて殺人を止めさせる、とかやりそうだぞw



「貴女の心に溜まった泥はチャチな殺人では濯げないでしょうね。
ではどうすれば良いか?
そんなこと、もう判っているでしょう。

ほら──
あの姦しい探偵が、貴女の後ろに幻視した──
もう一人の清らかな貴女(オリジナル)と──きちんと、向き合うのです。

さぁ目的が見えたらさっさと征くが好い、君がいる所為でさっきからこの小説家殿が脅えっ放しだ」

「き、京極、相手は殺人鬼だぞ
あまり刺激するようなことは「わかった」────えっ?」


京極堂に突如来訪し、辺りの書架を手当たり次第に切り裂いて水に換えた少女。

凶暴だった、目の前の少女は、何か憑き物が落ちたような瞳でこくんと頷いた。


「わたしのこころの泥泥したもの、人を殺してもすっきりしないんだね」

「そうだ」

京極堂が断言する。

「きってもきっても、なくならないんだね」

「そうだ。
君が自分の恥じらいを、胸中の泥を人に見られないようにする為には世界中の人
間を斬らなくてはいけない。

それは――出来ない話じゃないだろうが、面倒だ。
それよりは君の中の泥を直接濯ぐべきなのだ」


探偵をひとり紹介してあげよう。
悩みが解決しないことには、君は本の弁償代も憑き物落としの代金も払えないだろうからね。

いつのまにか気安い口調になった京極堂が、ぶっきらぼうにそう言った。





「わはははッ!
君が僕を殺すと云うのか、悪いが其れは不可能だッ!」


場違いにも程がある笑い声が京極堂前の往来に響いた。

そちらに眼を遣ると、天下御免の不良探偵 榎木津礼二郎が
ダットサンの屋根に仁王立ちをして吼えている所だった。

「な、何だ?榎さんあんた何やってるんだ」

探偵は胡乱な小説家の意見など聞き入れる気はない様だ。
よく見ると榎木津はダットサンの向こう側にいる人物に話しかけているのが判った。

「なぜなら君の探してる人は僕にしか見つけられないからだッ!
本来 君のお仲間なら人探しなど容易い事だろうが──どうやら君は嫌われているようだからね。
だから今君の味方になれるのはこの榎木津礼二郎をおいて他にない!
どんなに凄んでも僕は黙らないから観念したまえッ でーちゃんとやら!」

「で…」

その名前には聞き覚えがあった。
数日前京極堂を訪れ、さんざん暴れた挙げ句気紛れに姿を消した少女の名だ──
私は大層驚愕して、ダットサンの影に隠れて見えなかった少女を覗きこむと、
確かに其れはあの日見たのと同じ顔だった。

確か、デイとか云う──

「お、ひさし、ぶり」

こちらに気付いた少女が途切れ途切れに発音した。
首をゆっくりと此方に向け、重たそうな黒髪の奥から上目遣いに私の顔を見た。
やはり少女は微笑いもせず無表情の儘である。
いや、少し──ほんの僅か不機嫌に見えるのは気の所為だろうか?

「関君、その娘を怒らせない方が好いよ
『少し静かにしてくれないと殺します』などと物騒なことを云うから謝ってた所だ。
その娘は怒りん坊なのだ!」

対する榎木津は何故か物凄く上機嫌な様子でダットサンの屋根から飛び降りた。

榎木津のこの躁病染みたテンションが少女を苛立たせた事は想像に難くない。
恐らく少女は京極堂から榎木津探偵を紹介されたのだろうが、依頼して数分で
果てしなく後悔したことだろう…。
いまも彼女──デイは榎木津の後ろで彼の後頭部を睨みつけている。


「さぁ謝罪も済んだことだし仲直りの時間だ!

関君、この可愛い娘はでーちゃんだ。
お姉さんを探してる。
でーちゃん、この可愛くない猿は関君。
お姉さんを探してない」

「紹介くらい尋常にやってくれよ、榎さん!
だいたい榎さんは一つも謝ってないじゃないか。
観念したまえ、なんて謝罪は聞いたことがないよ」

「細かい事はいいよ。
それより何のために僕がこのダットサンを借りて来たと思ってるんだ?
依頼人と助手を手早く運ぶためだ。
早く乗りたまえ、地獄までドライブと洒落込もう」

「は?助手?」

探偵はこちらの否応を聞く前にダットサンの開いた窓から体を滑らせて運転席へ
と乗り込み、一発でエンジンを掛けた。
そのまま乱暴にアクセルを踏み込み車体を無理やり回す。
後部座席のドアは両方とも開いたまま、暴れ牛のように土煙をあげて。
がちゃん、とかぱりん、とか音を立てて道沿いの蕎麦屋に車体を擦っているがお構いなしだ。


「わはははッ 車を運転するのは楽しいねぇ関君!
やっぱりこれ僕のにしたいなぁ!この辺にこっそり名前書いちゃおうか」

「え、榎さん! その車は鳥口の──
いいや問題はそこじゃない! あんた一体何をするつもりだ!」

「決まってる、この娘の事件を解決しに征くのさ!」



喝、と強烈な車のライトが私達を照らした。


デイも私も呆然として──いや、横に眼をやるとやはり少女は無表情だった。
呆然としているのは私だけだ。
凡人の私はこの支離滅裂すぎる展開についていけない!


ずっと黙っていたデイがぽつりと呟いた。

「どこへ向かうの」

運転席から不敵な笑顔をのぞかせて探偵は答えた。


「でーちゃん家さ。君の生まれた原因を探るんだ」





基本的に、友人および俺が創っているのは
ファンタジックな異能力や異存在がアリな世界観なのですが、

しかしそんな謎パワーなど無くとも
京極世界のキャラ達のほうがキャラクターとしての強度があって、
こっちのキャラなんて圧倒してしまうんだろうなー…と、思いながら書きました。

書いてみたら見事に事実、その通りになりました。

うーん、やっぱりプロの小説家ってスゴい! にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ

「猫科の動物のような美女」という比喩を、俺も友人も勘違いしていた様子

楽音寺と友人の昔のメールから抜粋ですよー。
自分が書いたものは全て保存しておきたいので最近よくメール転載してます。
け、けっして更新が楽だからとかそういうワケでは(ry

これは、友人が作ったキャラの設定を煮詰めるのをお手伝いしているときのやりとりですね。


とある休日、とある街の中央広場。
歩行者天国なので人でごった返している。
大きなデパートにディスプレイが掲げられていて、今度放映される大作映画の宣伝が流れていた。

そこに黒いベンツが止まる。
バムッとドアを鳴らし登場したのはサングラスをかけたワイルドな金髪の美女。
迷彩柄の上着を腰に結びつけ、肩も露わな黒いタンクトップに、
太ももまでの長さに切ったデニムパンツという格好。
首には金属のドッグタグが揺れていた。

なんだか『休暇中の女性兵士』と言われれば納得してしまいそうな雰囲気である。
当然誰もが眼を奪われていた。

金髪美女はしばらく周りを見渡した後、サングラスをずらして意外と可愛らしい
丸い瞳をのぞかせる。

(あれ…あの顔どっかで見たような…)
群集のひとりが首をかしげる。
なんだか凄く最近、同じ顔を見たような気がするのだ。
ここ一週間、いや数日、それどころかたった数秒前にも…


そんな疑問をよそに美女は広場の真ん中できょろきょろと顔を動かし、
ついに相手を見つけた様子で手を振りながら笑った。
彼女の背後にそびえたつ、デパートのディスプレイに映し出されているのと
まったく同じ顔で──


「──ハリウッド女優のシンシア・マクミランじゃねーかっ!?
なぜこんなところに!?」

……みたいな感じを想像したw




「ふふ、日本は久しぶりね…。
ファンの少年、私は今日は休暇(オフ)なの。
これから知人と会う約束があるから人には知らせないで頂戴ね?」

「は、はい!シンシアさんの言う事ならたとえ火の中水の中草の中森の中!」

「スカートの中、はもうすこし親しくなってからね」

シンシアさんは微笑みながら金髪をさらりと首のうしろに流した。
っていうかポケモンとか知ってるのかこの人…
長い間ファンをやってるが彼女が日本フリークだと言う情報は耳にしたことがない。
そもそもシンシア・マクミランの私生活は謎に包まれていて、業界人ですら
彼女の住所や本籍を知らない。
そんな謎めいたところも、僕を含め多くのファンが彼女に魅了される理由の一つだった。

あぁ、しかし何て格好いい人だ…!
プライベートでも彼女は映画の中と寸分違わずクールで毅然としているんだなぁ!

とか僕が感動していると後ろから声がした

「あ、シンシアー!もーどこいってたのさー
鯛焼き冷めちゃうよ、はいあーん」


な、なんだこの小娘は!?気軽にシンシアさんに話しかけやがって!
だいたいシンシアさんが鯛焼きなど口にする訳がないだろ!居ねぃ!
シンシアさんはフォアグラとか松茸とかしか食べないんだよ!(偏見)

しかし少女が顔の前に差し出した鯛焼きを、シンシアさんは普通にぱくりとくわえた。

「これはうまいにゃー!
鯛焼きはやっぱり庶民の味方にゃー
高い金出してフォアグラとか松茸とか食べる奴の気がしれないにゃん」

あっれえぇえええ!?
な、なんかシンシアさんが今にゃーとか言ってたような…鯛焼き食ってたような…

いやそんな筈は…!

だって彼女はいつだってクールで毅然な

「ありがとねねこー
ねねこ大好きにゃ、すりすり」
「あーんもうシンシアやめてよー
ほんとに子供みたいなんだからー」

おっやぁああああああああああ!?(泣)

とかなんとかw
シンシアの変化を目撃した人は思いっきりビビって欲しいねw



《ここから友人のメール》
「ファンの少年、悪いけど友達が来たからここでお別れしましょう。
またいつか巡り会う日が来るなら──それは運命と呼べるのかも知れない……」

「お願いですから……唇にあんこつけたままキャラ戻さないでください……」

「ん?あ、甘いにゃあ、得したにゃぁ」

「お願いですから最後までキャラを統一して下さいよ!!」

こんな感じかwなんかキャラがブレイクしたねえ

《ここまで友人のメール》
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グリーン・グリーン外伝 “カメラ越しの風景”

友人小説に出てくる天才少年と秀才少女のカップルを、新キャラの視点から描こうという試みのスピンオフ。
まだ、ちゃんとした小説の形にする前の試し書きシナリオみたいな感じ。
俺にしては珍しくオチもなにも考えてはいませんがそのうち勝手に(俺の脳内で)完結するでしょう。たぶん。

以下、抜粋。 にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ

とある魔術のインデックス

※友人の小説のスピンオフという、世界で数人しか設定を把握できてない短編。お目汚しに。
一応、某ラノベとは関係ない図書館の人形の話です。


★★★

インデックス・ギア・スターリスクは人形で、たしか生まれたのは800年前だ。

とはいえ、積み木の城の閉ざされた塔にひとり転がっていた時代のことはよく覚えていない。

光も差さないカビ臭い座敷牢。
埃にまみれた棚のビーカーの光。
悪食のネズミが骨になって朽ちるほど、生命と無縁な、枯れた場所。

開かない扉。


…でも、その扉が開いてからのことは、全て覚えている。

男爵。

食卓。お風呂。寝室。中庭。娯楽室。かわいい服。館の外の町。太陽。爽やかな風。緑のにおい──


インデックスは人形だけど、自分の誕生日は、男爵に救われたあの20年前だと強く思い込んでいる。

信じている。

電気仕掛けの脳に、深く深く、とっても大事な宝物のように、インプットしている。


★★★



「──と言うわけで、ボクは現在ぴちぴちの20歳なんだからね!
 読者諸氏はそこんとこよく理解しておくように」

「えー…780年近くもサバを読むなんて」

と、リードマンが読みかけの本から眼をあげて突っ込みをいれるけど、無視無視!

ボクはおやつのアップルパイをもぐもぐやって紅茶で流し込む。味がわかる。いい香りがする。しあわせ。

思うに、生物というものは誰しも幸せを求めて生きているんだ。
逆説的に、幸せを知らなかった、目的を持たずにただ壁をみつめていた当時のボクは本当の意味では生きていなかったと言える。

ボクが生きることを始めたのは。幸せの在り処を知ったのは。
あの日、男爵と出会ってからなんだ。

「んぐ、だから、製造年月日とは違った意味で、ボクには誕生日があってだね」
「図書室では飲食は禁止…」

はむはむ。ボクは自重しない。
呆れたように呟くリードマンは可愛い。
世にも珍しい紙のゴーレム。外見は普通の女の子だけど背中が本のページのようにばらりとめくれて、
そこには彼女のすべてが書き込まれている。
寝ている間に盗み見てみたら『きょうのごはんは歴史辞典の35ページ目でした。おいしかったです』とか
『○月×日 いんでっくすとおふろ。ぐぬぬ。きょにゅうだ』とか書かれてて子供の絵日記かーい!って思わず笑ってしまった。
嘘がつけない彼女はとても恥ずかしがり屋で、そこを覗くと頬を膨らませて怒るのだけど、その表情がまた可愛くてボクは
ついつい今夜も彼女のページを覗いてしまう。


夕食後、鏡をみるとボクの顔が映る。
白い清潔な男物のシャツ。
けして伸びることのない錆びた鉄色の髪。
左右対称の顔。幼い容姿。黒い瞳。
『“キノの旅”の主人公に似てる』とリードマンに評されたことがあるが生憎その本は未読だった。

口のまわりについた生クリームに気付いてそっとぬぐう。

ボクには食欲も性欲も睡眠欲もないけれど美味しいものを食べると幸せになれるので可能な限り三食は摂るようにしている。
楽しいことや気持ちいいことや美味しいもの。
たとえ必要じゃなくても、退屈しないためには大事なこと。

だけども眠ることだけは苦手だ。
どんなに横になっても眠りだけはボクに訪れない。
しょうがないから夜通し本を読む。図書室のメイドになって良かったと思う。たまにはリードマンが本を朗読してくれるしね。


しあわせを求める毎日。

ときどき不思議になるのは、ボクの胸に刻まれたとある魔術の禁書目録。
数冊の本の題名。
月明かりの中で服をぬいで、リードマンに見て貰うけど、博識な彼女でも見たことがないという謎のタイトル。

ボクの肌はセルロイドじゃないし、手触りも体温もあるのだけれど、その胸元の文字を見ると自分が人形だってことを
どうしても思い出してしまうのだ。

人間に似ているからこそ。

逆に、似て非なるものだと、思い知らされてしまうのだ。


★★★


ある秋の蛇曜日。男爵が旅人を拾ったらしい。

「えっ、マジで?天斬大剣から落ちてきたの!?」

相棒が本で顔の下半分を隠すようにして上目遣いで答える。
「うん、そうみたい」

「マジでマジで!?じゃじゃあ、ひさしぶりに異世界から旅人が来たんだっ!?」

「…いんでっくす、ツバが飛ぶ」

「ひゃっほぉーーーーーーーーーーーうっ!!!!お客さんだお客さんだお客さんだーーーーーーっ」

「図書室では大声は禁止…」

ボクの胸は高鳴る。
異世界の人なら、このタイトルを知る者が存在するかもしれない。

旅人さんが来たら、まずこの世界の事を教えよう。
神様のことや、魔術や、恩恵や──いろんなこと。
そしてそのお返しに、この胸の禁書目録を確認してもらって、それから──。

わくわくしながら旅人さんが図書館を訪れる日を待つ。
本を塔のように積み上げ、窓際に運び、それを階段のようにとんとんと登って採光窓のお掃除。

ああ、どうしようほんっとうに楽しみだ-!
調子に乗って天井に逆さまにぶらさがり(足の握力で捕まればカンタンです)足で布巾を滑らせ、ダンスを踊った。


この身に刻まれた禁じられた魔術、ボクの製造理由、序列の謎、いろんな伏線に決着がついたうえで、

もしかしたら辛い事実かもしれないそれを乗り越えて──それでも、しあわせに暮らせたらいいな。

どきどき。
先の事はわからないけど、ボクは自分の運命のページをめくる。


(続く) にほんブログ村 イラストブログ イラスト練習へ

シャワータイムは朝食のあとに

※友人の小説のスピンオフという、世界で数人しか設定を把握できてない短編。お目汚しに。
一応、お風呂大好きなお気楽メイドの生い立ちの話です。

★★★

全てを引き裂く嵐の夜。

その地獄に負けないように泣き声をあげた。

それが私の最初の記憶。

それが私の、最初の産声。


泣き声に気付いて馬車が止まった。森の深奥、嵐にかき混ぜられた底なし沼。
そんな場所に捨てられた私に、風前の灯火さながらの私に、差し伸べられた手。


それが──私が初めて恋をしたひとだった。


★★★



「お帰りなさいませ、男爵」
「ティシュー。すぐに湯を沸かしてくれないか。子供を拾ってきたのだ」


長い間、嵐の音を聴きながら馬車にゴトゴトと揺られ、到着したのは一軒の大きな城だった。
男爵のマントに包まれ(抱っこされていた)恐る恐る外界を伺う私をみて、つややかな黒髪のメイドさんが驚く。
扉に片手をかけ、蜀台を携えたエプロンドレスのティシュー。
この時、たしかもう12年ほども前になるはずだけど、彼女はいまと変わらない年齢、相貌、表情だった。
あまりの美しさに見蕩れてしまう。


ティシューは私を安心させるためか優しく微笑んで、
では雨漏りの修理は後回しにしてまずはお風呂の準備をしましょう、と奥へ消えた。

雨漏り?
回想しながら思い出してみると、確かにその時代の男爵の根城、シャトー・ジュー・ド・キューブは
あちこちが古く、蜘蛛の巣だらけで、窓は割れ、照明もなく薄暗かった。メイドもティシューだけ。
じゅうたんには剣戟の跡や焼け焦げすらあった。

「前の持ち主と戦って巻き上げたばかりでな」と男爵は私を優しく抱き抱えながら言った。
そうそう!この頃は男爵、優しかったんだよね。にゃはは。


泥をぽつぽつと落としながら城を歩き、やがて浴室へたどり着く。

そこの更衣スペースで、私は生まれて初めて【鏡】という物に出会って目を丸くしたのを覚えている。
きゃーん、と子犬のような声をあげて尻餅をついた。
目の前の私も尻餅をついた。

「【鏡】を知らないのか?見たところお前は7歳くらいのようだが…そうか、記憶が無いのか」

男爵は少し暗い顔でそう言い、【鏡】について教えてくれた。
これが私…
先ほどのティシューの綺麗な顔を思い出し、そして自分の泥にまみれた姿が恥ずかしくなって耳が熱くなった。


「そう恥じることはない。お前も風呂に入れば綺麗になるさ」





で、今思い起こすとほんとうに信じがたいことなんでけど。
もし人から聞いた話なら私だって「うっそだー」とか言って笑い飛ばすようなことなのだけど。


男爵が、私をお風呂にいれてくれた。


ぐしょぐしょに水分を含んだ服を脱がせて、泥だらけの肢体にぬるま湯をかけて、絡まった栗色の髪を洗ってくれて。


全身満遍なく泡で包んで肌をこすって、泥も疲れも洗い落として。


爪を切ってくれさえして。
そして、一緒に浴場でゆっくりお湯に漬かっていた。


まだ若い男爵は頭にたたんだ布をのせて、浴場のへりに両腕をのせて気持ちよさそうに天井を仰いでいる。
子供の私は男爵のお腹あたりに座って、背をむけたまま膝を抱えていた。
真っ赤な顔をお湯に半分ほどつけてぷくぷくと泡を鳴らしていた。


「どうした?急に黙りこくってしまって。礼くらい言うべきだと私は思うがね」
いやだって恥ずかしかったもん!


むしろ7歳とはいえ女児の身体をこうも躊躇なく隅々まで洗える男爵の方が問題なような気がしたが。
それをこの時点での純粋でぴゅあーな美少女=私に求めるのは酷というものだった。


しかし男爵は私の背中を指でつつっと撫でた。
「き、きゃうっ!」
「礼は?」
「…う-」
「【ありがとう】だ。ほら、言ってみるがいい」
「……【ありが、とう】」


満足したように男爵が頷いたのが解った。
男爵に対して、恥ずかしいような恨みがましいような嬉しいような、なんとも言えない気持ちが湧きおこったけど、
言葉をまだあまり知らない。
いまならぜったい【ろりこん】って言う。


「そう。ひとつひとつ覚えていけ。取り戻していけ。
これが【風呂】だ。たっぷりのお湯で身体を癒す。さっきまでの嵐が地獄なら、此処は天国だろう」


「【ふー、ろ】。」


「もうすぐ夜が明ける。そしたら朝食を取ろう。普段は逆なんだがな。シャワータイムは朝食のあとに、だ」


「【しゃわーたいむ…?】」


「そう。ところでお前、名前は覚えているか?」






そして12年後。わたし…シャワータイムはいま19歳。
お風呂が大好きな給湯室のメイド。


こうして時々昔のことを思い出すたびに、どっかにいる(であろう)お父さんやお母さんに、
ほんのちょっぴりの皮肉と愛情を込めて、わたしは心のなかで報告する。


毎日元気にお仕事してます。
一日16回風呂に入ります!
後輩も増えましたー!(でも序列は私のほうが低い!なぜだー!?)


…まだ時々、男爵とお風呂に入っています。
い、いや、勿論給湯室のメイドとしてだよ!?身体も、いまは私が洗ってあげてるし。


…こほん。


まぁ。だからさ。
心配しなくても大丈夫だよ。
なにしろ此処での生活は、いつもいつでも、天国で肩まで漬かっているような日々なのです。はぁー。極楽極楽。






あ、また新しいお客さんが来たみたいだね。


「シャワータイム、いますか!?」
ティシューの声が聞こえた。 あの頃と変わらない、優しい声。


「いるよー」
わたしは元気よく返事をした。


「浴槽に湯を張っておいてください、あとで入ります。それとこちら洗っておいてください」
「ノープロブレム。あわせて了解、お任せあれ」


ティシューのお願いに快く承諾して。
扉の外を見る。
ひとりの【旅人さん】がティシューと一緒にいた。へぇー。かわいい顔してる。


今の声は?と【旅人さん】が聞くと、給湯室の長、シャワータイムです、との答えが返ってきた。


【旅人さん】は不思議そうにわたしに尋ねる。
シャワータイムが名前なの?





わたしは。



ぱぁっと笑顔をみせて。



誇りと元気と胸いっぱいの愛を込めて、答えを返す。



「そだよー、よろしくねっ」



にゃは、ヘンな名前だけれどけっして恥ずかしがったりはしないのだよ。

それはこの世で一番、楽しくて、気持ちよくて、素敵なことの名前。

私が私につけた幸せの名前だからね。



シャワータイムは朝食のあとに──終わり。
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ベーグル・オーバードライブ

※友人の小説のスピンオフという、世界で数人しか設定を把握できてない短編。お目汚しに。
一応、髪に触られるとトラウマが発動して暴走する女の子の話です。


★★★

みなさんこんにちは。被服室のメイド、ベーグル・マッ・ペルタです。
本編ではまだ喋ったことがありませんよね。
えっと、ですから…。

……えー。そのー…。

なんというか、じょうずに、話せないかもしれません。ごめんなさい。

で…ですね。

どうしよう、本当にうまく説明できないんですけど。あの。あのですねっ。

わたし…その、いま、誘拐されているんです。

…。


ほんとうですよ。

え、のんびり喋りすぎ?

あまり危機感がない、ですか。

うー。でも、わたし、昔からこういう性格で。

衣服の山が崩れてきて埋まっちゃったときも、ティシューちゃんに助けられるまでお昼寝してましたし。

セイントさんの衣装を作ってるとき、試着したままなのを忘れて水着姿で被服室からでちゃったり。

お仕事に夢中になって、気付いたら300mもあるマフラーを編んでしまったり…。


えへ。

すみません。

ちょっと思い出し笑いをしてしまいました。

だめですね、わたしって。

えっと、でも本当にピンチなんですよ。

とりあえずこの縄を斬る方法を、この通信魔術を聞いている視聴者のみなさんに、一緒に考えて欲しいのですけれど…。


★★★


街道を走る馬車はすでにもう俺さま率いるブリュンヒルデ団の物で、当然その積荷も俺達の物だった。

てきとーに街道沿いの馬車を襲って、その中身ごと頂く。
若干18歳、親父の跡を継いで集団の頭におさまったこの俺──イディオ様が考え出したおいしい商売である。

ただの盗賊だって?
ちげーんだよ、わかってねーな一般ピーポーは。
この商売にはロマンがあるんだ。宝くじを引くような一獲千金の夢がよ!へへへ。

「お頭ー、いま戦利品を仕分けしていたんですがねー」
風が吹く御者台の、その後ろから幌を捲り上げて子分が声を掛けてきたので「ああ?どうしたんだ?」と俺は答える。
頭に赤いターバンを巻いたすきっ歯の子分キッコーは、いかにもな下卑た表情を浮かべていた。
手もみしながら歯の隙間からしゅうしゅうと音を立てて蛇みたいに笑う。
いつみてもブサイクだなー…。まぁ、男は中身だ。それは言わずにいてやろう。こいつ中身も最悪だけどな。

キッコーはそんな俺の思惑など知らず、うきうきと楽しそうに話をする。
「絨毯や服にまぎれて…へへ、女が眠っていたんで」
なに?
「なぜそんなところに…上玉か?」
「へいっ!顔はちょいと乳くさい泣き虫なガキってカンジでやすが、髪がグンバツに綺麗でさ!」
「お前ちょっと喋り方が古過ぎないか?」「は?」「…いやなんでもない」

俺はしばし風にマフラーを靡かせて指を噛む。女…?女だと…!?

なんてことだ──そりゃ困った。
俺達は一応物品専門の盗賊だ。身代金ねらいの強請りたかりはしたことがないし、殺人なんてもっての他だ。
親父が生きてた頃の名残だが、我がブリュンヒルデ盗賊団はこれでも硬派をきどってるんだぜ?
なのに、女なんていたらそりゃあ──

「エロいことし放題じゃないかっ!!」

俺は拳を握り締め、ぐっ!と空に掲げた。「ですよねぇ!」子分も同じく拳を握る。
さすがキッコー、下衆さには定評のある奴だ。
へっへっへ、親父はもういねーしな!いまどき硬派なんてはやらねー!時代はエロスに忠実な肉食系よ!

「よおっしゃ!そこに案内せい!」「いえっさ!」

イディオ・ブリュンヒルデ。
なんつーか、我ながらもうどうしようもないキャラクターの少年だった。


★★★


「――邪魔するぜ」

あ、どうもこんにちわ。

こちらこそお邪魔してます。

わたしのいる幌馬車の後部、積荷をおくスペースに、なんだか荒んだ目をした男の子がはいってきました。

挨拶しようと思ったんですけど、いまちょっと縛られているので、むー、という変な声しか出ません。ゆるしてね。

「へへ、とりあえず縛ってありまさぁ」

横にいた赤いターバンのひとが言います。

あ、あなたが縄の持ち主さんですか。すごいですねこれ。ぜんぜん抜け出せないです。

…って。

ようやく思い至ったんですけど、このひとたち、もしかして(もしかしなくても)…悪いひと、なんでしょうか…?

「ほ、ほほおう!こりゃホントに上玉じゃねぇか──また縛り方がいいな!」

あら。

「でがしょう!この女体を強調する縛り方!
世が世ならあっしの名前をとってキッコー縛りと名づけられても良い程の逸品ですよ」

あらあら。

…どうしましょう、本気で悪いひとっぽい…。わたしピンチ。

男の子と赤ターバンさんは周囲の絨毯などを押しのけながらにじにじと近寄ってきて、ぴったりとわたしの両脇につきました。

わぁ。近い。

こ、これから何をされるんでしょう?

こちょこちょされたら嫌だな。
デコピンされたらどうしましょう。
目の前でわたしの好きなおやつを食べるところをみせびらかすとか…。
いいえ、悪いひとだからもっと意地悪なこと、たとえばスカートめくりとかされるかもしれません。

大変です。

この通信を聞いているみなさん。どうか答えてください。

こちらベーグル。

街に布を売りにいく途中でうっかり商品のなかで眠ってしまった、バカなメイドですけれど…助けて欲しいです…。


★★★


「とりあえず俺は揉むぞ!──俺は!揉むぞぉおおっ!」
「大事なことだから二回言ったんですね親分!」
「ああそうだ!」
「右ですかい?左ですかい?」
「両方揉みしだくに決まっておろう!」
「ひゃあ、極悪ですね親分!じゃぁあっしはふとももを──!」

おピンクな雰囲気に包まれた幌馬車の車内で、バカが2人してはしゃいでいた。
言うまでもなく俺と子分だ。
だが悔いはねぇ──!漢として!盗賊として!俺は欲望のままに生きるぜぇ!
道徳?はぁ!?
倫理?なにそれおいしいの!?
人としてやっちゃいけないこと?むしろこれは男なら最後までヤるべき事だろーがっ!むっつりさんは黙ってろ!

(ぐへへへ…って、あれ?)
俺ははたと気付く。
この美しい髪の少女。豊満な果実を揉まれそうになっているのに、わきわきと動く俺の手が迫っているのに、
きょとんとして何が起こったかわからないといったツラをしていやがる。

まばゆく輝かんばかりの金髪に、度の強そうな丸眼鏡。
その奥であどけなく疑問符をうかべる無邪気な瞳。
さくらんぼのようなぷっくりした唇。
いじめればすぐに泣いてしまいそうな細い眉──儚い表情。

ごくん、と唾を飲む。
(嘘だろ、そんな事も解らないくらいウブなのか──)

フリルで彩られたシャツに、サスペンダーで吊られたストライプのミニスカート。
ボタンは子猫のかたち。
帽子を被り、その細い首をおしゃれな立て襟で半分ほど覆っているのが可愛らしい。

実際の年齢は知るよしもないが、たぶん年齢以上に幼く見えるその小さな体、あどけない容姿に──

俺はあろうことか、本気でどきどきし始めていた。

(うおお…なんだこの気持ち…っていうか…妙にいじめてみたくなるのは何故なんだ…)

自分の性癖にどん引きだった。

(いや、これはしょうがねぇよ…この子がこんなに可愛いのが悪ぃんだっつーの)

無理やり自分を言いくるめて俺は心を決める。
この子の色んな顔が見たい。
泣き顔でもいい。
とにかくその表情をもっともっと引き出してやりたい──。

っつーわけで──!
「キスをするぞ!」
「ま──マジですかい親分!?投げキッスではなくて!?」
「ああ!盗賊らしく、直接唇を奪ってやる!」
「す、すげぇ!さすが親分、そこにシビれる憧れるぅー!」

キスひとつでこの大騒ぎ。我ながらバカっぽい。
つーかここまで読んでもらえれば解る通り、俺ら盗賊団は基本的にシャイなヘタレばかりだった。
うるせぇ。こちとらまだ童貞である。

ゆっくり立ち上がると幌馬車の砂っぽい天井に頭をぶつけそうになる。
俺はほどいたマフラーを後ろに投げて、金髪の少女に近付く。その頬をなでる。
まだよくわかっていないらしい少女は子犬のような眼で不思議そうに俺を見上げるばかりだ。それが余計に興奮する。

帽子を脱がせ、顔を引き寄せるために&ruby(・・・・・・・){その金髪に触れて}…



★★★

あ。

あ──ああっ…。


やああああああああああああああああああああっ!!!!

★★★


おお!?
「なななななんだぁ!?」

俺達の馬車が破裂した!幌を突き破って四方八方に!ぽっかりと風穴があきそこから盗品、いや商品がごろごろ落ちていく。
ぶちぶちぶち、と縄が切れる音。
その破壊を成したのは──少女の髪だ!

「えええ?な、なんでやすかこの髪は!?凄い勢いで伸びて──へぶっ!」
「キッコー!?」
ああ、赤いターバンの子分が束になって急成長を遂げた金髪に絡め取られちまった!
めきめきと幌馬車の天井に押し付けられてうねり、とうとう子分ごと外に突き破られる!布が引き裂かれる。
なんだこりゃぁ!?まるでブロンドの津波だ!髪が魔獣のように襲ってきやがった!

穴だらけの幌馬車の後部座席。

縄を引きちぎり、身を縮こませしくしくと泣く少女の髪が──その輝きをさらに増しながら、奔放に伸び、不思議とヘアスタイルに大きな変化をもたらさないまま周囲のものを吹き飛ばし──咲き誇っていた。

人魚の尾。狐の毛色。有翼人の羽。
この世のあらゆる美しいものに似た──黄金。

「あ…この現象見たことあるぞ!」

[[ラプンツェルシャンプー]]。髪を伸縮自在に操る魔道具だ。

ちょっと前に親父がそれでヒゲを洗って、大変なことになった(具体的には親父の死因となった)、
――我が盗賊団にとっては因縁のアイテム!

まぁ逆恨みだけど!

だ、だがそれはかなり高価な希少品だ!
効果だって一日しかもたない筈の!
こんな少女が日常的に使っているわけがない!
──それこそ、この街道の近くに棲む三奇人がひとり、メノウ男爵のメイドでもなければ潤沢に使えるはずのない、レアアイテムだ!


金髪はあいかわらず少女の感情の爆発を体言するかのように蠢き、きらめき、獲物を探している。
しかし…この胸を揉まれそうになってもきょとんとこちらを見ているような無防備なお嬢ちゃんが
なぜこんなこんなに急激に泣き出したんだっ!?

まるで過去のトラウマにでも触れちまったみたいに──

そんなつもりはなかったのに──

ただ、俺はただキスを──

「はっ!」

刹那、俺もまた髪に絡め取られて馬車のそとに放り出された。



★★★

ふえっ…ぐすん、…ぅあっ、ああああん。
やだよ。
やめてよ。
髪に触らないで。
ひっぱらないで。
助けて──ティシューちゃん──ロベルタさん──みんな──メノウ男爵!

★★★


「うう…く、くそっ、やられちまった!」

砂まみれになってぺっぺっとツバを吐き出す。干草が絡まって邪魔だ。
俺は道端にブザマにぶっ倒れていた。はー格好悪い!
街道にはわだちがあって、その数十歩先で馬車が倒壊していやがる。車輪がコロコロ。もったいねぇー。

ボロボロの幌(ダジャレじゃないぞ)の中では、まだ金髪の少女がえぐえぐ涙を堪えているようだった。
さすがにもう髪のお化けは消えている。

俺は全身の痛みをこらえてよろよろと立ち上がる。
少女の方を向く。
子分とともに、幌馬車を吹き飛ばされた形だけれど…怒りなんて到底持てなかった。
ただ泣きじゃくる少女の声が──あまりに儚く、切なく、悲痛で──

(そこまでするつもりじゃなかったんだ…)

俺はなんとなく罪悪感を覚えて、いそいで彼女に駆け寄った。
「あー、その…すまん!平気か?」
ぽりぽりと頭を掻きながらばつが悪そうに謝罪する俺。
少女も膝を抱えてすんすんと鼻をならし、こっちをちらっと見る。よっしゃ。ここは男の見せ所だ。全力で真面目に謝れ俺!

「髪…触られるの、嫌だったのか?」
こくんと頷く少女。
「そうか」
俺はすっと地べたに片膝をついて眼をつむり、少女に祈るようにして頭を下げる。
盗賊の頭領だなんて関係ない。女の子を泣かせちまったんだから。
「ごめんな。そこまで嫌がるなんて思わなかったんだ」

あれ?俺ちょっと好青年じゃねぇ?

「ほんっとごめん、もうしねーから許して。実はドサクサに紛れてちょっとおっぱい揉んじゃったけど、
その分はどうにかお詫びすっからよ」

…いや、真面目だったかどうかは疑問だが。

「お詫び…どうやって、ですか?」
おお!初めて少女が話をしてくれた。
「えっと…そうだ、体で返すぜ!いくらでも触ってくれ!」

…。我ながら嫌になる、この根っから軽薄な性格。
1秒くらい真面目でいられないもんかね?

しかし。
なんとなんと、金髪の少女はその答えにくすっと笑ってくれたじゃねーか!
「あはっ」
「へ、へへへへへ」

秋も深まってきたある日の出来事。
久しく街を暖めた太陽の下で。
俺と少女の間になんとなく和やかな雰囲気が生まれる。
盗賊と誘拐された少女というシチュエーションを思えば、それは奇跡みたいな時間だった。

この子になにかする気は…さすがにもう、ねぇな。
馬車は壊れたけど、おぶってやってもいい、俺が家まで送っていってやろう。
もう盗賊なんかに襲われないように──なんてな、はは。俺が盗賊だっつーの…


不意に声がした。
「ほう、体で返すとな」

(げっ…!?)嫌な予感がして、ぎぎぎ、と首を曲げて振り向くと、そこには──


「君がベーグルにしたことは、到底体で返せるような重さの物じゃないんだよ、盗賊くん」
頭に薔薇を咲かせたメイド。胸にささった剣がきらりと陽光に輝く。

「同僚が世話になったようで──おもてなしをしなくてはなりませんね」
トランクケースを傍らに携えたシックな黒エプロンのメイド。波打つカチューシャと長髪が風に揺れる。

「……おもてなし?ティシュー、それを言うならお仕置きだろう」
ナイフを両手いっぱいに構えたメイド。冷徹な視線が俺の全身に突き刺さる。

「にゃはは、盗賊くんもバッカだなぁ、許可もなくベーグルの髪を触るなんて!」
ガウンを着た風呂上りらしいメイド。天使の輪が神々しい。

「ヒーローが到着する前に退治されちゃうなんて、ワルモノの風上にもおけん奴めーっ。重ねて退治し尽くしてやるっ」
手甲(ガントレット)と金属靴(グリーブ)を装着した冷たい皮膚のメイド。燃えるような瞳が対照的だ。


そして──

その五人を従えるようにして、なぜか街道の地面に似つかわしくない豪華な椅子に足を組んで座っている貴族がいた。

「居眠りをした挙句、うかうかと“積み木の城”の馬車ごと誘拐されたベーグルの処置はあとで考えるとして──
わたしの&ruby(・・){道具}を盗んだ盗賊くんには、それなりに反省してもらわなくてはなるまいね」

「め…っ」

め、め、め…めの…!

「眼?抉り取って下さいというならやぶさかではないが」

じゃねーし!
さらっと恐い事を言う男爵。

そう──そこにいたのは、世界三奇人が一人、メノウ・アウララッハ男爵だ!

「ううううう、うっそだろーーーー!?だだだ、男爵がなんでこんなところにっ!?」

「何が不思議なのかね。ここはトワレヤ諸島で、私の家の近くで、君が泣かせたそのメイドはわたしの所有物なのだ。
まぁ、普段はひとりのメイドの危機に5人も──ましてや私自身が出張る事などないのだがね──」


「…っ!こ、この子あんたのメイドだったのか…。

ごっ、ごめん!悪かった、この通り謝るよ!
っていうか髪以外は指一本触れてねーしさ!(嘘だけど!)

へへっ、あ、あんたも、俺みたいな雑魚にかまってるヒマはないだろ?
盗賊団みんなで大人しくこの街から消えるからさ、どーかこのまま見逃して──」


*「駄目だ」


「…っ!?」

「解っていないようだな。貴様がベーグルを怒らせかけていたことを。
──世界が滅びる寸前だったことを、理解していない」

「せ…せかいだぁ?」

何がなんだか解らん俺を、男爵は心底興味がないといったように横目で見ると、手袋をした指でぱちんと音を鳴らした。
「私の美しい世界を滅ぼそうとした重罪人だ。──各々好きに裁くがいい」
「「「「「はい」」」」」
五つの声が重なる。

「ちょ…俺キスだってしてねーのに…って、ぎゃあああああーーーーーーーーーーーーっ!!!????」



秋も深まってきたある日の出来事。
久しく街を暖めた太陽の下で。

ひとりの少年が、鼻血をすすり、ぼろぼろになった体で空を見上げつつ。
もう盗賊はやめようかなぁ…と思ったとか思わなかったとか。



★★★


「ベーグル、今回の件もそうですけど、貴方は少し無防備すぎます」

そ、そうかな?でもティシューちゃんが言うならきっとそうだね。

「帽子ではなく兜を装備するべきだと思います…いや、でもそうするとその綺麗な髪がみえなくなっちゃいますか…うーん…」

危険だけど、だからこそ美しいのですよね、とティシューちゃんはいい、わたしの髪を撫でてくれました。



えっと、よく分かりませんけど、兜をかぶるのは嫌だなぁーと慌てて思ったり。

ベーグルだって女の子。

もしあした世界が滅びる日だとしても、お洒落を楽しみたいお年頃なのです。


★★★


おわり。
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